JTの投資魅力

 JTは、営業利益率(2019年12月期・実績)23.1%の高収益企業です。国内の喫煙人口が減少していく中で衰退していくイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実態は、安定高収益です。自己資本比率48.0%と、財務内容も良好です。ROE(自己資本利益率)で見ても13.1%と高い水準にあります。

 JTは、株主優待も実施しています。JTの予想配当利回りは7.4%と魅力的な水準ですが、配当金のほかに、12月末時点で1年以上継続保有している株主に自社製品などを贈る優待も実施しています。JTの自社製品というと、たばこかと思うかもしれませんが、そうではありません。

 ご飯の詰め合わせ、水の詰め合わせなどを選ぶことができます。ただし、優待内容は、予告なく変更されることがあることを、ご了承ください。また、「決算期末時点で1年以上継続保有」していることが条件ですので、今から投資しても、最初に優待の権利が得られるのは、2021年12月末となります。

JTが売られる3つの理由

 JTは株式市場で不人気です。以下3つの悪材料が影響しています。

【1】    国内で喫煙者減少が続いている

 受動喫煙(他人の喫煙で出たタバコの煙を吸入してしまうこと)を防止するための法律が強化されつつあります。2018年7月に健康増進法の一部が改正されたことにより、2019年7月には学校・病院などの敷地内が原則禁煙となりました。全面施行となる2020年4月から、すべての建物の屋内が原則禁煙となります。喫煙が可能なのは、喫煙を主目的とする店舗(バー・スナック)や公衆喫煙所、屋内に設けた喫煙スペース(喫煙室)に限られます。なお、喫煙室には標識の掲示が義務付けられ、20歳未満は立ち入りが禁止されるようになります。

 東京都は国の規制をさらに強化した「東京都受動喫煙防止条例」を制定しました(全面施行は2020年4月1日)。小規模の外食店で実質的にほとんど喫煙ができなくなる可能性もあります。こうした一連の規制強化を受けて、国内の喫煙人口はさらに減少が続く見込みです。

【2】    次世代タバコでJTの「プルームテック」が米フィリップモリスの「アイコス」に劣後

 米国や日本などで、紙巻きタバコに代わって次世代タバコ(加熱式タバコや電子タバコ)を吸う人が増えています。紙巻きタバコではタバコの葉を燃やしてその煙を吸うため、副流煙が周囲に広がる問題がありますが、次世代タバコは、火を使わないので副流煙が出ません。世界的に禁煙や分煙が進む中で、特に米国と日本では、次世代タバコに乗り換える人が増えています。

 JTは次世代タバコで「プルーム・テック」を国内で販売していますが、日本ではフィリップモリスの「アイコス」の方が人気で、プルーム・テックはシェアを低下させてきました。次世代タバコで苦戦していることが、JTの将来の不安材料となっています。

【3】    ESG投資で投資除外銘柄となることがある

 日本および海外の年金基金などに、ESG投資(エコ・社会的責任・ガバナンスを重視して銘柄選択する)を導入する動きが広がっています。JTは、健康に害のあるタバコを販売しているという理由で、ESG投資では除外銘柄となることがあります。