下落相場時の4つの手法
下落相場では、具体的にどのように戦えばよいのかを一度考えてみましょう。
1:空売り
個別銘柄の株価をみると、銘柄により値動きが大きく異なっていることが分かるはずです。年間を通して上昇した銘柄もあれば、逆にほぼ1年中下落を続けた銘柄もあります。
下落相場になれば、株価が下がる銘柄の方が圧倒的に多くなります。株価がさらに下落しやすい下降トレンドの状態にある株を空売りし、値下がりしたら買い戻すことで利益を得ることができます。
筆者は、上昇トレンドの銘柄を買う一方で下降トレンドの銘柄を空売りするという「ロング・ショート戦略」を使っています。強い銘柄を買い、弱い銘柄を売ることで、日本株が値上がりしても値下がりしても利益を得られるようにしているのです。
2:ベア型のETF(上場投資信託)
ベア型のETFとは、例えば日経平均株価が値下がりすると逆に価格が上昇するという性質をもったETFです。
日経平均株価が下降トレンドであれば、そこからさらに株価が値下がりする可能性が高いといえますので、ベア型のETFを買うことで利益を狙うのです。
3:攻守の切り替えができる「ポジション管理」
下落相場では、当然ながら多くの銘柄の株価が下落してしまいます。下落しているときに買った株が値上がりして利益を出すこと自体、物理的に不可能です。
そうしたときに、「何としても利益を上げたい!」と無理をすると、株価の大きな下落によって逆に致命的な損失を出してしまいかねません。
ですからポジション管理、言い換えれば攻め時と守り時の切り替えがとても重要になります。上昇トレンドにある銘柄が多いときは攻め時、下降トレンドにある銘柄が多いときは守り時です。投資可能な資金を100とすれば、攻め時なら70・80・90…と株式への実際の投資額を多くしていきます。守り時なら30・20・10…と株式への投資額を減らしてキャッシュを増やす、というイメージです。
4:利益確定のタイミング
下落相場でも、株価が上昇しないわけではありません。しかし上昇相場とは異なり上昇の大きさも小さく、上昇の期間も短くなります。したがって、利益を大きく伸ばそうとするよりも、ある程度株価が上昇したらこまめに売却して利益確定をした方がよい結果を生むことが多いです。
実は筆者は、この4点目の「利益確定のタイミング」についてはあまり実践していません。自分のルール通り、25日移動平均線を割り込んだら保有株は売却、としています。下落相場での多少の損失は覚悟しつつ、上昇相場で利益をできるだけ伸ばして大きな利益を狙うことを最優先しているからです。
上昇相場ではこのルールにより実際に大きな利益を得ることが可能です。でも今のような下落相場では、25日移動平均線を割り込むまで保有していると、せっかくの利益がなくなってしまうどころか、損切りとなるケースも少なくないのです。
そもそも下落相場では利益が伸びにくいので、利益を伸ばすよりもこまめに売却することが投資成果の向上につながります。
ベア型ETFの注意点
実は2点目の「ベア型のETF」は、それほどお勧めはできません。なぜなら日経平均株価などの株価指数と個別銘柄の値動きは異なることが少なくないからです。
例えば保有株が値下がりするのをヘッジするために日経平均株価に連動するベア型ETFを買ったとしましょう。
最悪のケースは、保有株が値下がりを続けているのになぜか日経平均株価は上昇する、というものです。こうなると、保有株でも損失、ベア型ETFでも損失というダブルパンチとなります。
そこまでにはならなくとも、保有株が大きく値下がりする一方で日経平均株価はあまり値下がりしない、ということになれば、保有株の値下がりのヘッジ手段としてはあまり役に立たなくなります。
もちろん、保有株の値下がりヘッジ目的ではなく、純粋に日経平均株価が値下がりすることで利益を上げることが目的であればベア型ETFへの投資も悪くありません。
あくまでも、個別銘柄を保有しつつ、かつその銘柄の値下がりのヘッジのためにベア型ETFを買うことはお勧めしないということです。
さらには、ベア型ETFへ投資するためには当然ながら資金が必要となります。個別銘柄を保有し、さらにベア型ETFを買うとなればより多くの資金を準備しなければなりません。
ですから筆者は、保有している銘柄の株価が値下がりしているにもかかわらず保有を続けるのではなく、下降トレンドになった時点で速やかに売却して現金化することが、損失拡大に対する最大のヘッジだと考えています。