<今日のキーワード>

「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、2019年の中国を振り返るとともに、『2020年の注目点』を見ていきます。

【ポイント1】2019年は米中問題や、混迷する香港情勢が焦点に

 2019年は、前年に続いて米中問題に振り回される1年となりました。5月の米トランプ大統領による中国製品への関税引き上げ発表、8月には対中追加関税第4弾の発動表明など、世界は激震に見舞われました。中国経済は緩やかな減速が続き、2019年の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年比+6.1%と、2019年の経済成長率目標「+6.0~6.5%」の下限に近い位置にあります。また、香港の経済情勢はさらに厳しく、「逃亡犯条例」を契機としたデモの過激化・長期化による悪影響から、7~9月期の実質GDP成長率は同▲2.9%と、約10年前のリーマンショック当時以来のマイナス成長となりました。2020年に入っても混乱が鎮静化する見通しは立たず、香港情勢は依然として混迷の中にあります。

【ポイント2】米中貿易協議に進展、中国株式市場は通年では上昇へ

 年初は米国の利上げ休止観測が高まったことや、米中貿易協議進展への期待などから大幅に上昇したものの、5月に入ると米トランプ大統領が中国製品への関税を10%から25%に引き上げると表明したことや、ファーウェイへの製品供給を事実上禁じる制裁措置に踏み切ったことなどから大幅に調整しました。その後は、米中摩擦の動向や欧米の金融緩和、中国の景気対策への期待など、レンジ内で上下する動きとなりましたが、12月に米中貿易協議で「第一段階の合意」に達すると、投資家心理は急速に改善し、中国の株式市場は年末にかけて上昇しました。

【今後の展開】2020年は財政・金融政策による対応強化が見込まれる

『2020年の注目点』は、まずは引き続き米中関係の動向と景気への影響、そして米国の大統領選が重要です。11月の大統領選まで1年を切り、トランプ大統領は再選のために実績を出すことが求められます。票のために必要とあれば対中政策の変更にもちゅうちょしないと考えられ、トランプ大統領の態度1つで株式市場が動揺する可能性には注意が必要でしょう。一方、2020年は中国にとって第13次5カ年計画の最終年、2021年は共産党結党100周年と、節目の年が続きます。経済の失速による社会の不安定化は最も避けるべき事態であり、今後も中国経済への下押し圧力に対しては、財政・金融政策による対応強化が見込まれます。最後に日中関係ですが、春に習近平国家主席の来日が予定されており、その際には、「戦略的互恵関係」の推進を確認した2008年の「日中共同声明」に次ぐ新たな政治文書を取り交わすとの観測も出ています。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。