為替DI:「円安見通し」今年最大級に強まる!

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 為替DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。 

「12月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」楽天DIからのアンケートに回答いただいた3,906名のうち、1,203名(31%)が「円安」に動くと予想していることが分かりました。「円高」に動くは977名(25%)で最も少なく、「中立」は1,726(44%)でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは+5.79で、2カ月連続でプラスになりました。プラスのDIは円安見通しが円高見通しより強くなっていることを示します。

 2019年のDIは5月から5カ月間マイナス(円高見通し)が続き、9月にはリーマンショックが起きた2008年10月以来となる▲46.03まで下がりました。しかし、先月からDIがプラスに反転。投資家の相場観が円高から円安へと変化しています。円安見通しの強さは今年最大になっています。

 11月のドル/円は、米中貿易問題のニュースに一喜一憂しながら1.78円と比較的狭いレンジで上下した1カ月でした。最近、報道の見出しが「貿易戦争」より「貿易交渉」が多くなってきているのは、少なくとも良い方向に進んでいるサインともいえますが、合意はもうすぐ、もうすぐといわれながら、この1カ月間、表面上は全く進んでいません。トランプ米大統領が「香港人権法案」に署名して法律を成立させたことも、事情をやや複雑にさせています。それでもクリスマス前には合意するだろうとマーケットは楽観的に考えています。みんな年末はゆっくりしたいですからね。

 第1段階の交渉で焦点となるのは、中国が米国からどれだけたくさん大豆を買うか、ではなくて、米国が対中関税を撤廃するのかということ。知的財産権や構造改革など、より深刻な議題については第2段階に持ち越されます。とはいえ、第1段階でこれだけ揉めるなら、第2段階合意までにはどれだけ時間がかかるのでしょうか。その日は永遠にやってこないのかもしれません。

 貿易戦争のニュースに隠れてしまった感がありますが、FOMC(連邦公開市場委員会)は重要な政策決定を行いました。それは「利下げ休止」。FRB(米連邦準備制度理事会)は10月に今年3回目の利下げを実施しましたが、その直後から、パウエルFRB議長もブレイナード理事も、そして連銀総裁も、みんな申し合わせたように、「金利は適切。見通しに大幅な変更がない限り調整は必要ない」と繰り返し発言しています。マーケットにFOMCの考えを刷り込んでいるのです。

 気になるのは、どのようなときに「見通しに大幅な変更がある」のか、ということ。米中貿易戦争が再び火を噴いた時がそれにあたるという位は想像できます。

 とはいえ、長引く貿易戦争で米国経済も不況入りするという不安をよそに、第2四半期のGDPは予想を越える2.1%に拡大しています。そして失業率は過去50年間の最低水準。見通しの大幅な変更はしばらく必要なさそうです。

 そうであれば、利下げは「休止」というより実質的には「終了」。米製造業は早くも立ち直りの兆候が見えていて「アメリカ経済、やっぱり強い」これも12月のテーマとして注目したいと思います。