日経平均の見通し
「DIは横ばい 目先の期待は織り込み済みか」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先が22.12で、3カ月先はマイナス3.84となりました。前回調査の結果がそれぞれ22.72、0.52だったことを踏まえると、1カ月先がほぼ横ばいで、そして3カ月先がマイナスに転じ、両者ともにDIの数値自体はわずかに悪化した格好になります。
ただし、回答の内訳グラフを見ると、強気派が占める割合は小さくなっておらず、相場の見通しに対する楽観的な見方が大きく後退した印象にはなっていません。中立派が半分近くを占め、残りを強気派と弱気派で分け合っているように見えます。
また、アンケート実施期間(11月25~27日)の日経平均の動きをたどると、取引時間中に年初来高値を更新する一方で2万3,500円が上値の壁となる状況が続いていました。相場が崩れにくいながらも積極的に上値を追っていくほどの決め手に欠けていたというのが、今回の横ばいに近い結果につながったと思われます。また、日経平均は8月下旬に底を打ってからの3カ月間で3,000円以上も上昇してきたピッチの速さが意識されている面もありそうです。
2019年相場も12月に入り、いよいよ残りわずかとなりました。引き続き、米中協議に対する期待をはじめ、国内外製造業の業績後退の底打ち・回復期待見込み、そして各国中央銀行の緩和姿勢などの「合わせ技」による株価上昇が続くのかが焦点になります。
しかし、12月のスタートは国内外の年末商戦の順調な滑り出しが好感されながらも、米中合意に対する楽観ムードがここに来て陰りを見せる状況になっています。
いわゆる「第一段階の合意」成立に向けた具体的な進展がない中、米国で「香港人権・民主主義法案」が成立し、中国側が反発していることや、中国ウイグル族に対する人権抑圧問題が浮上したことなどによって、年内の合意が難しくなったのではとの観測が不透明感を強めています。
それでも、12月15日の米国による対中制裁関税第4弾(2回目)の発動を間近に控えており、「近いうちに第一段階の合意はなされるだろう」という見方は根強く、市場の需給的な要因も相場が相場を支える可能性もあって、株式市場は今のところ値崩れしていません。日経平均は12月3日の取引終了時点で2万3,000円台を維持しています。
何だかんだで、米中間の合意成立に向けた動きが再加速できれば株価は再び上昇していくと思われますが、その勢いは合意によって緩和・撤廃される関税や規制の度合い次第になります。「期待をかなり先取りしていた」なんてことも十分にあり得ます。
また、「第二段階以降の合意」については、中国企業に対する米国の規制が焦点になってきます。通信機器のファーウェイをはじめ、監視カメラを手掛けるハイクビジョン、顔認証システムのメグビーなどの中国企業に対する取引制限は、ウイグル自治区や香港などの人権問題や、安全保障という米中で合意が得られにくい項目が理由となっているため、米中の対立は思っているほど改善しない可能性があります。
11月にレンジ相場のもみ合いの動きを強めていた日経平均ですが、今後のさらなる株価上昇の「中段もちあい」なのか、それとも目先の「天井圏の形成」なのかを見極めようとしている局面に差し掛かっていると言えそうです。