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OPEC(石油輸出国機構)は、国際石油資本から石油産出国の利益を守ることを目的として設立され、加盟国は現在14カ国です。その原油生産量は世界の約4割を占め、原油の供給や価格形成で重要な役割を担っています。しかし近年は米国のシェールオイルのシェア拡大などによって影響力が低下し、ロシアなど非加盟主要産油国を含むOPECプラスを常設とした枠組みで産油国の結束と原油価格の維持を図っています。
【ポイント1】OPECプラス『協調減産』拡大、サウジアラビアは追加減産を表明
減産規模を120万バレルから170万バレル、サウジ追加減産で210万バレルに
12月5日のOPEC総会と、6日のロシアなど非加盟主要産油国を含めたOPECプラスにおいて、2020年3月まで『協調減産』の規模をこれまでの日量120万バレルから、同170万バレルに拡大することが決定されました。
また、サウジアラビア(以下サウジ)は割当枠を超える減産を予定しており、実質的な全体の減産量は日量210万バレル程度に膨らむ可能性があることを表明しました。
【ポイント2】原油価格の維持を図る
経済減速や米国増産の影響に対処
米中貿易摩擦による世界経済の減速を背景とした原油需要の伸び悩みが懸念されることに加え、米国のシェールオイルを中心とした増産などに対抗し、原油価格を維持することが目的です。
サウジが減産に積極的な背景には、国営石油会社サウジアラムコのIPO(新規株式公開)を控え、その株価を高めたいとの意向が強く働いていると市場では見られています。
【今後の展開】サウジ主導の追加的な減産は原油価格の押し上げ要因
サウジ主導の追加的な減産は原油需給を一層タイトにし、原油価格の押し上げ要因です。供給サイドでは『協調減産』がどの程度実行されるかがカギとなりますが、OPECの盟主であるサウジが減産に積極的である他、これまでも減産合意が守られてきたため、今回の合意が順守される可能性は高いと考えられます。
一方で、最近の指標が示す通り世界経済の減速が落ち着き、米中協議も合意に向けた動きが進展すれば原油需要の減少も収束するでしょう。よって需給は比較的タイトな状況が続く可能性が高く、原油価格は堅調に推移することが見込まれます。
なお、原油価格が大きく上昇するとインフレ上昇のリスクが高まり、金融市場には悪材料となりますが、原油価格が上昇すればサウジを含め産油国の減産意欲が低下し、原油供給が増加する可能性があるため、原油価格の上昇はそれほど大きくはならないと考えます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。