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 3月期決算企業の中間決算発表が始まりましたが、大規模な『自社株買い』を発表した企業を中心に株価が上昇する場合が多いため、発表の際、業績に加えて『自社株買い』にも市場の関心が高まっています。『自社株買い』はコーポレート・ガバナンス(企業統治)改革の進展を背景に、1株当たりの利益や資産価値を向上させる目的などから資金を充てる企業が増え、今年度は10兆円に達する見込みにあります。

【ポイント1】2019年度の『自社株買い』は大幅に増加の見込み

『自社株買い』とは、企業が発行した株式を、その企業が市場で買い戻すことをいいます。企業が、買い戻した後に消却することで発行済み株式数が減少し、1株当たりの利益や資産価値を向上させる効果があります。

 2019年度の『自社株買い』の計画額は、QUICK集計によると9月末時点では約5兆1,700億円となっています。例年上期より下期の方が『自社株買い』の計画発表が多いため、年度では10兆円(昨年度は7兆円弱)を上回る可能性が高まっています。『自社株買い』の増加の背景には、資本効率の向上に取り組む企業が増えていることに加えて、米中対立を受けて成長投資に踏み出せない企業が『自社株買い』を選択している面もあります。

【ポイント2】『自社株買い』の発表が相次ぐ

 大日本印刷は、9月11日の取引終了後、発行済み株式総数(自己株式を除く)の1割弱にあたる最大600億円の『自社株買い』を実施すると発表し、翌12日には株価は9%を上回る上昇となりました。同社はリクルートホールディングス株の売り出しに参加し、長年政策保有していた株式を売却、513億円の売却益を計上すると発表しており、資金の活用法を巡って市場の関心が高まっていました。

 10月28日の中間決算公表時、オリックスは1,000億円を上限とする『自社株買い』の実施を発表しました。発行済み株式総数(自己株式を除く)の約5.5%に相当する7,000万株を上限として実施します。併せて『自社株買い』の終了後、発行済み株式総数の5%相当を超える分の全ての自己株式を消却することも発表しました。

【今後の展開】『自社株買い』は今後も増加の方向

 2019年度の『自社株買い』は日銀の上場投資信託(ETF)の買い入れ額を上回り、10兆円を超える見込みにあり、日本株の需給関係に与える影響は非常に大きくなっています。『自社株買い』は米国に比べれば規模が小さく、今後も増加するとみられます。こうした中、企業は『自社株買い』ありきではなく、成長ステージや株価水準も十分検討した上で、中長期視点から実施することが望まれます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。