中長期では年成長率約50%が見込まれる市場も

 長期的には成長ストーリーが描ける分野があります。筆者が注目しているのはデータセンター向けのアクセラレーターです。市場調査会社のMARKETS AND MARKETSによると、2017年の市場規模は16億ドル(1ドル107円換算で約1,700億円)でしたが、2023年までには211億9千万ドル(同2兆2,700億ドル)まで拡大する見通しです。年成長率は49.47%に上ります。

 データセンター・アクセラレーターとは、データセンターのパフォーマンスを高めるハードウェアを指します。データセンターのAI化を促し、ディープラーニングや機械学習、ワークロードを高速化するパワーを持ちます。

 各産業からのニーズを背景に、高スペックのデータセンターに対する需要は高まるとみられます。前回のレポート 「成長するゲーム市場の黒船、アップルとアルファベット」で述べたように、ゲーム業界では今後、クラウドをハブにしたストリーミング型ゲームの競争になる兆しが出ています。他の分野でも同様に、重たいデータ処理を高機能のデータセンサーに担わせ、蓄積され続ける様々なデータを効率的に分析・処理する取り組みが予想されます。

 データセンター・アクセラレーター分野でリーディングカンパニーと言えるのは、高速の計算能力を有するプロセッサGPU(画像処理装置)で高いシェアを有するエヌビディア(NVDA)です。同社は2019年3月に、スーパーコンピュータやサーバー向けの通信機器メーカーであるメラノックス・テクノロジーズ(MLNX)との買収契約締結を公表するなど、大量のデータ処理技術をさらに磨く動きを見せています。

 ただし、インテル(INTC)アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)ザイリンクス(XLNX)といった他の半導体メーカー、さらに、アルファベット(GOOGL)マイクロソフト(MSFT)などのクラウドサービス提供企業が新しいチャンスをつかむ可能性もあります。各社は近年、独自のGPUや、用途によってプログラムを書き換えられる半導体チップFPGAなどを活用した製品で、エヌビディアとは異なる強みをアピールしています。各製品には機能面、コスト面で一長一短があるとみられ、今後、各産業でどの製品が普及していくかに注目が集まるでしょう。