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『日銀短観』とは、日本銀行が金融政策運営の参考にするため、3カ月ごとに約1万社の企業に行う経済調査のことです。『日銀短観』では、企業の景況感に加え、売上高、収益、設備投資の計画などが公表されます。中でも大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が代表的な指標として注目されます。10月1日に発表された19年9月の『日銀短観』では、大企業・製造業DIが3期連続で悪化しました。

 

【ポイント1】大企業・製造業の景況感は3期連続で悪化

大企業・非製造業も2期ぶりに悪化

 19年9月の『日銀短観』は、大企業・製造業の景況感を示す業況判断DIが5と、前回19年6月調査の7から2ポイント悪化しました。悪化は3期連続で、13年6月以来の低水準ですが、市場予想の1を上回りました。海外景気の減速や米中貿易摩擦への懸念から比較的大幅な悪化が見込まれていたものの、小幅な悪化にとどまりました。3カ月後の先行きの同DIは、3ポイント悪化の2が見込まれています。

 大企業・非製造業の業況判断DIは21と、前回調査から2ポイント悪化しました。悪化は2期ぶりです。先行きの同DIは、6ポイント悪化の15が見込まれています。非製造業は好調な内需を背景に、高めの水準を維持していますが、消費増税の影響などが懸念されているとみられます。

 

【ポイント2】設備投資計画は底堅い

19年度想定為替レートは108.68円

 19年度の設備投資計画は、全規模・全産業ベースで前年度比+2.4%と、前回から僅かに上方修正されました。また、ソフトウエア投資は19年度計画が同+12.8%と例年より高く、積極的な省人化投資を反映しているとみられます。

 大企業・製造業の19年度の想定為替レートは、1ドル=108.68円と、前回調査の109.35円からやや円高水準となりました。

 

【今後の展開】日銀の追加緩和の追い風とはならない見込み

 製造業の景況感は3期連続で悪化したものの小幅な悪化にとどまり、非製造業の景況感は引き続き高水準で、設備投資計画も底堅いことから、国内景気は足踏み状態にあり、本格的な調整には至っていないと考えられます。今後は米中通商協議の進展や消費増税の影響が注目されます。

 今回の『日銀短観』は、景況感の悪化が小幅なものにとどまり、設備投資を含む内需の底堅さが保たれていることを示したため、日銀の追加緩和の追い風とはならないと思われます。