レポ金利の急上昇とFOMC
2019年9月18日、銀行や企業がドル資金を調達する際に支払う、翌日物レポ金利が10%に急上昇した。レポ金利の急騰は、四半期の法人税支払いや米国債入札の支払いなどの資金需要が高まったことが背景にあると説明されている。NY連銀が公開市場操作(オペ)を通じて531億5,000万米ドルを市場に供給したが、極めて異例の事態である。
レポ金利の急上昇はリーマンショック(金融危機)の発端となった2008年3月のベアー・スターンズ破綻の時にも起きており、嫌な兆候と言えよう。米大統領選挙前のリセッション(景気後退)入りの確率は75%と述べている債券王のジェフリー・ガンドラックは、「惨事が差し迫っているわけではないが、FRB(米連邦準備制度理事会)はこの警告サインを利用し、ある程度のバランスシート拡大に戻るだろう。」と、今後のQE4(量的緩和第4弾)の可能性を示唆した。
次の米景気後退期にはQE4=パウエル・プットが発動されるという観測は多い。しかし、「景気が後退しなくてもトランプ米大統領はパウエルFRB議長にQE4をやらせるために、近いうちに中国との貿易戦争をエスカレートさせるだろう…」という観測も市場の一部でささやかれている。選挙を来年11月に控えたトランプ大統領が望んでいるのはマイナス金利やQE4である。
そんな中、9月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)は0.25%の利下げを決定した。ドット・プロット(FOMC参加者の政策金利見通し)で追加利下げ期待が後退しドル/円は一時108円台半ばまで上昇したものの、結局、いってこい相場になっている。ECB(欧州中央銀行)理事会の時のユーロと同じような相場展開だ。トランプ大統領は利下げ決定後、「パウエル氏と連銀はまたもや失敗」とすぐにツイート。「根性も判断力もビジョンもない! ひどいコミュニケーターだ!」と非難した。
ドル/円(5分足)とFOMC相場
ドル/円(日足)
ポンド/ドル(日足)
ユーロ/ドル(日足)
介入を求めるのは、支配を求める誤った入口
今回のレポートでは、“ドクター・ドゥーム”と呼ばれるマーク・ファーバーのレポート「マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート2019年9月号」に寄稿しているスペインの運用者フェルナンド・デル・ピノ・カルボ=ソテロの相場見通しを読者に読んでもらいたくて、レポート発行元のパンローリングさんに頼んで転載を許可していただいた。以下はその抜粋である。
マーク・ファーバーの投資スタイルはブルとか、ベアとかいった単純な方向性ではなく、金融市場の異常事態を察知して投資家に警告を発すると同時に、その機会を利用して膨大な利益を得ることである。1987年、ウォール街のブラックマンデー、1990年の日本市場のバブル崩壊、1993年のアメリカのゲーム業界の衰退、1997年から1998年にかけてのアジア太平洋市場でのパニックなどを的確に予測して多くの投資家を救い、また、巨額の利益を上げた実績を持っている。