8月の与信拡大ペースが市場予想から上振れ、融資構造も改善
中国人民銀行(中央銀行)が発表した最新金融統計を見ると、国内金融機関による人民元貸出の月間増加額は8月に前年同月比5.5%減の1兆2,100億元と、ほぼBOCIの予想(1兆2,100億-1兆3,000億元)や市場の予想(1兆2,000億元)通りの数字となった。うち新規の企業向け貸付は6,513億元と、前年同月比で386億元増。短期、中長期貸付の伸びが全体の数字を押し上げた。市中銀行に対し、実体経済への資金供給(特に中長期の製造業向け融資)を促す政府当局の方針が奏功し、融資構造が改善した格好。ノンバンク向け融資は945億元にとどまり、前年同月比で506億元増加した。
また、実体経済の流動性を示す中国独自の指標「社会融資総量」(TSF)は、8月に前年同月を409億元上回る1兆9,800億元と、市場予想(1兆6,000億元)およびBOCI予想(1兆3,000億-1兆4,000億元)から大きく上振れた。前年同月比の伸びは主に、オフバランスシートの非標準型資産(証券市場や銀行間市場で取引されていない債権性資産)の安定的な推移によるもの。地方政府特別債の縮小がこれを一部相殺した。BOCIは続く9月の新規人民元貸出が1兆5,000億-1兆6,000億元(前年同月実績1兆3,800億元)に達するとみて、同貸出残高が12.4%増加すると予想。9月の社会融資総量については2兆2,000億-2兆3,000億元(同2兆1,700億元)を見込む。
中国人民銀行は8月に、公開市場操作(オペ)を通じ、差し引き1,530億元を市中に供給。翌日物、1週間物のSHIBOR(上海銀行間取引金利)は8月後半に約2.6%、2.7%前後と、ここ2-3カ月の高水準で推移した。民間の貸出金利は8月に一段と低下。豊富な流動性を背景に、預金金利も低下した。
一方、銀行が8月に発行した理財商品は5,025種と前月比で14%減。1カ月物、1年物商品の予定利率は4.02%、4.10%と流動性の拡大を背景に16年以来の低水準となった。
銀行セクターに関する最近のニュースは以下の通り。8月17日、人民銀行が新たな最優遇金利(LPR)決定メカニズムを発表、一段の金利自由化に踏み切った、上場銀行が8月後半に相次いで19年6月中間決算を発表、規模の拡大や資産の健全化が見られた、9月6日、人民銀行が預金準備率の引き下げを発表。これにより、銀行各行の利益が年率で1%近く膨らむ見通しとなった。
BOCIは銀行銘柄の現在株価の19年予想PBR(株価純資産倍率)が平均0.66倍にとどまる点に触れ、銀行セクター全体に対して強気見通しを据え置いている。また、中国当局が引き続き、実体経済を支えるための景気対策を打つと予想。これが10-12月期に段階的に成果を上げ、セクター全体の19年通期の利益成長に寄与する見通しを示した。個別では中国建設銀行(00939)および中国光大銀行(06818)の株価の先行きに対して強気見通しを継続している。