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 オフィスビル仲介大手の三鬼商事は、オフィスビルの空室率や平均賃料を毎月公表しています。2012年6月には9.43%であった東京都心5区の空室率は2019年7月には1.71%となり、極めて低水準となりました。こうした良好な不動産需給を背景に不動産大手は、これまでは人気の高い都心の大型ビルに注力してきましたが、ここにきて『中小型ビル』への参入が本格化してきました。今後の動向が注目されます。

 

【ポイント1】7月の都心5区のオフィスビル空室率は極めて低水準

 新築ビルの成約などが順調で良好なオフィスビル需給が続いています。8月8日に公表された三鬼商事の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の2019年7月のオフィスビル空室率は、1.71%となり極めて低水準にあります。また平均賃料は、坪当たり2万1,665円となり、67カ月連続で上昇が続いています。

 こうしたオフィスビルへの旺盛な需要に対応するため、不動産大手は人気の高い都心の大型ビルの再開発を優先して進めてきました。一方、『中小型ビル』の取り組みは遅れがちでした。ただ、ここにきて新築でグレードの高い『中小型ビル』のニーズも高まり、『中小型ビル』への不動産大手の参入が本格化してきました。

 

【ポイント2】野村不動産など大手が参入

『中小型ビル』の開発で先行したのが野村不動産です。2008年に第1号案件が竣工し、「PMO」ブランドで都内に次々に建設してきました。同ビルは大規模ビル並みの設備やセキュリティ面を備え、『中小型ビル』のイメージを向上させました。また今年7月に、同ブランドに加えて更に一回り小さく、従業員10人未満事業者向けの個室型の賃貸オフィスブランド「エイチワンオー」を立ち上げると発表しました。成長期の新興企業の需要の取り込みを図ります。東京都心部を中心に2023年度までに15拠点の開設を計画しています。

 三菱地所は今年1月に、高いデザイン性と快適性を兼ね備えた『中小型ビル』をシリーズ名称「CIRCLES(サークルズ)」として展開すると発表しました。敷地面積100坪前後の土地に、コンパクトオフィスビルを、東京都心部を中心に年間3-5棟前後をシリーズ展開するもので、第一弾を建設中です。

 

【今後の展開】『中小型ビル』への不動産大手の参入加速を期待

『中小型ビル』は個人の所有などが多く、なかなか建て替えが進まず、大規模新築ビルの周辺に築年数の古い『中小型ビル』が多く残っているのが現状です。魅力的な都市開発を進めるうえで『中小型ビル』の再開発も欠かせません。不動産大手の参入が一段と加速して、『中小型ビル』の開発、再生が進むことが期待されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。