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 米国地区連銀のひとつであるカンザスシティ地区連銀は、毎年8月下旬にワイオミング州『ジャクソンホール』において、経済政策に関する国際シンポジウムを開催しています。世界各国から中央銀行総裁、政策担当者、学者などが参集し、世界経済や金融政策を巡る議論を交わします。今年の会議は「金融政策の課題」をテーマとし、8月22日~24日に開催されました。

 

【ポイント1】注目されたパウエルFRB議長講演

景気拡大維持のため「適切に対応する」と述べた一方、時期には言及せず

 パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、8月23日にカンザスシティ連銀主催の国際シンポジウムで、「金融政策の課題」 をテーマに講演を行いました。

 パウエル議長は、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)以降の米経済を取り巻く環境の変化について、世界経済の成長鈍化と貿易政策の不確実性、インフレ圧力の鈍さが見通しの重荷になっているとし、米経済は足元で好調を保ちつつも、「成長持続へ適切な行動をとる」と述べました。一方で、行動する具体的な時期までは言及しませんでした。

 

【ポイント2】米中対立激化の懸念が強まる

9月1日からの関税引き上げは不可避か

 同日、中国政府は、米国が9月1日から発動するとしている対中制裁関税「第4弾」に対する報復措置として、原油や自動車、農産物など約750億米ドル分の米国製品に5~10%の追加関税をかけ、9月と12月の2段階に分けて発動すると発表しました。

 これに対し、トランプ米大統領がツイッターを通じて対抗措置を講じる姿勢を示したことから、米中の対立が激化するとの懸念が一段と強まりました。また、パウエルFRB議長の講演に対しても直後に不満を表明しました。

 

【今後の展開】米中対立の状況悪化を受けてFRBの利下げは年内4回となろう

『ジャクソンホール』会議でのパウエルFRB議長の講演は、追加利下げを示唆したものとして好意的に受け止められたものの、その後のトランプ大統領の中国への対抗措置表明などを受けて一気にリスク回避の流れとなり、株式市場が急落し、債券市場が上昇(利回りは低下)しました。

 米中対立は報復合戦の様相となっており、9月1日からの追加関税発動はほぼ避けられない状況です。状況の悪化を受けて、弊社ではFRBが7月に続き9、10、12月にそれぞれ0.25%の利下げを実施すると予想します。