新興国の利下げは、米国利下げに追い風。9月、10月も?

 ただ、新興国の利下げはトランプ政権の望むところだろう。というのは、FRB(米連邦準備制度理事会)は7月に政策金利を引き下げたが、引き下げ幅はトランプ政権が求める0.5%ではなく0.25%だった。

 パウエルFRB議長は利下げ決定後に「米国が利下げサイクルにあるわけではない」と述べ、トランプ政権による利下げ要求を丸呑みしない姿勢をアピールしている。一方、トランプ氏側近からは8月に入って、年末までに1%の利下げを要求する声が出ている。

 こうした中での新興国の利下げラッシュは、FRBが追加利下げする動機付けになる。大統領選を来年11月に控えるトランプ氏にとって、株価を押し上げて経済政策の成功を印象付けるためにはFRBによる金利引き下げは不可欠なのだ。

 7月末に政策金利を10年半ぶりに引き下げたばかりの米国では、9月の再利下げが濃厚だ。将来の金利を予想する金利先物市場では、9月17、18日のFOMC(連邦公開市場委員会、声明発表は日本時間19日午前3時)での再利下げ決定を織り込み、早ければ10月29、30日のFOMCでの再々利下げも先取りする展開となっている。

 ECB(欧州中央銀行)も7月25日、ドラギ総裁が追加利下げや資産購入の再開といった金融緩和策の発動を検討すると表明。早ければ9月12日の定例理事会での金融緩和決定が予想される。

 日本でも7月30日に黒田東彦日銀総裁が記者会見し、追加金融緩和の可能性に言及している。

 こうした世界的な利下げムードを反映し、10年物米国債の利回りは1.6%台に低下。ドイツでは30年物国債の金利がマイナス圏で推移するなど金利低下が著しい。