最高益予想でも高配当利回り?「ワケあり最高益」の意味を考える

 今回、高配当利回り株を、今期純利益で最高益を見込んでいる銘柄から選別しました。ただし、この条件だけで、成長性のある銘柄と見なすのは早計です。今期、最高益でも、来期以降、業績が低迷するリスクはあります。実際、そうしたリスクを含んだ銘柄が多く挙がっています。

 高配当利回り株は、言い換えると、不人気株です。何か将来の不安があって株価が買われにくいために、配当利回りが高くなっていると言えます。今期、最高益見込みでも、将来に不安がある「ワケあり最高益」株が、高配当利回りのスクリーニングにひっかかってきています。

 どういう不安があるのか、理解した上で、投資することが必要です。

【1】通信株の不安

 KDDI・ソフトバンクは、ともに最高益更新を予想しています。ただし、日本のケータイ電話市場が徐々に飽和してくる不安と、ケータイ電話事業の競争が激化する不安から、株価は低迷しています。

 KDDIは、ケータイ電話の収益はピークアウトしつつありますが、ライフ・デザイン事業(金融・流通・サービスなど)の収益を伸ばすことで最高益を更新していく力があると予想しています。一方、ソフトバンクは、最高益を更新する力は弱くなっていく可能性があります。

【2】総合商社の不安

 大手総合商社は、資源関連株とも言われます。世界中に、原油・LNG・石炭・鉄鉱石・銅などの天然資源権益を保有し、資源事業で高い利益を上げているからです。ただし、資源事業の利益は不安定です。資源掘削技術の革新によって原油などの資源を安く大量に生産する技術は、年々進歩しています。資源が供給過剰になって、価格が大きく下がるリスクはいつも意識されます。

  大手総合商社は、資源事業だけでなく、非資源事業を積極的に拡大しています。非資源事業の利益拡大によって、最高益を更新しつつある総合商社の投資価値は高いと判断しています。

  総合商社は、世界中の新興国でビジネス展開しているため、「世界景気敏感株」でもあります。総合商社に投資する価値は高いと思いますが、総合商社ばかりに集中投資すべきではないと思います。

【3】住宅関連株の不安

 10月に消費税が10%へ引き上げられた後、住宅受注が落ち込み、業績が低迷するリスクがあります。したがって、今、住宅関連株に積極的には投資したくありません。住宅関連の高配当利回り株では、積水ハウスのみに投資したいと思います。今、住宅関連への投資は積水ハウスに絞った方が良いと考えています。海外事業やメンテナンス、投資事業などに分散し、収益安定化をはかってきているからです。

 大東建託には今は投資したくありません。アパート建設の先行きに不安があるからです。超低金利や相続税対策から、アパート建設が一時ブームになりましたが、ブームは下火になりつつあります。貸家が供給過剰になる可能性が出ており、当面、アパート関連株には警戒が必要と思います。

【4】金融株の不安

 低金利の長期化で利ざやが縮小する不安から、銀行株が売られ、つれて金融株全般に上値が重くなっています。

 ただし、リース株は、低金利でも高収益をあげていく力があります。低金利だと収益が悪化するファイナンシャルリースを縮小し、低金利でも稼げるオペレーティングリースを拡大している成果から、最高益を更新しつつあるリース株が増えています。オリックス・三菱UFJリースは最高益を更新する力のある高配当利回り株として、長期投資する価値があると思います。

 金融株では、3メガ銀行(注)も高配当利回り株として投資していく価値が高いと判断しています。最高益を更新する見込みはありませんが、安定的に高収益を上げていく力があると判断しているからです。

【注】3メガ銀行
三菱UFJ FG(8306)(予想配当利回り4.8%・7月16日時点)、三井住友FG(8316)(同4.7%)、みずほFG(8411)(同4.7%)の3行。三菱UFJ FGは三菱UFJリースの親会社。

【5】景気敏感・製造業の不安

 貿易戦争激化、世界景気悪化のリスクがあるため、機械(アマダHD)・化学(デンカ・昭和電工)などの景気敏感・製造業株には積極的に投資しにくい環境が続いています。ただし、私は2020年以降に世界景気の回復を予想しており、景気敏感・製造業にも一部、分散投資していくべきと考えています。

 

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