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日本の医療費は42兆円に達し、国の予算の約4割に相当します。医療費の内、医薬品については、がん治療薬の「オプジーボ」などに加えて、2019年5月には白血病治療薬の「キムリア」など『高額薬』の保険適用が相次いでおり、医療費の増加に対して対応が迫られています。こうした中、厚生労働省は2019年度から新薬価ルールを本格導入しました。今後の動向が注目されます。
【ポイント1】『高額薬』の登場により新薬価ルールを本格導入
日本の公的医療保険制度は医薬品などは安全性が確かめられれば、ほぼ自動的に公的保険で給付される点が特徴となっています。厚生労働省は2019年4月から新しい薬価ルールに費用と効き目のバランスを吟味する「医療技術評価」を本格導入しました。
この背景には、がん治療薬やC型肝炎治療薬などに加えて、2019年5月に白血病治療薬の「キムリア」など『高額薬』が保険適用され、今後も高薬価の遺伝子治療薬などの登場が相次ぐ見通しにあることがあります。
【ポイント2】『高額薬』の保険適用が相次ぐ
2014年に小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブが共同開発した「オプジーボ」が保険適用されました。その後薬価は引き下げられましたが、体に備わる免疫の仕組みを利用し、がんを攻撃するがん免疫薬で希少疾患を治療できることから、当初は極めて高い薬価となりました。この「オプジーボ」が登場したことをきっかけに保険制度の中で、『高額薬』をどう位置づけるかという取り組みが本格化しました。
2019年5月には白血病の治療薬「キムリア」の薬価を1回3,349万円にすることが承認され、22日から保険適用されました。スイス製薬大手ノバルティスが開発しました。今後も米国で1回の投与で約9,500万円相当の価格が付いた遺伝性網膜疾患治療薬の「ラクスターナ」などの『高額薬』が控えています。
【今後の展開】保険財政の健全化を図るうえで、柔軟な取り組みが求められる
新薬が、化学合成による医薬品から研究開発や製造にコストがかかる「抗体医薬」とよばれるバイオ医薬品にシフトし、今後も『高額薬』が世界で相次ぎ登場する見通しにあります。ただ医療費の抑制を『高額薬』の薬価引き下げに依存すると製薬会社の新薬開発意欲をそぐ可能性もあります。海外では『高額薬』に成功報酬制が導入されている例もあり、医療費の増加を抑えつつ、医療の高度化を図るために更なる柔軟な取り組みが求められます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。