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6月17~19日、ポルトガルのシントラで欧州中央銀行(ECB)が年次で行う『ECBフォーラム』が開催されており、ドラギ総裁のスピーチが注目されます。ECBの金利政策に関し、市場では、マイナス金利の弊害が限界に近づいているとの見方があります。しかし、必ずしも限界にあるとは言えない点に注意が必要です。ドイツの銀行貸出の増加など金融データを冷静に見れば、ECBが利下げに踏み切る余地はあると考えられます。
【ポイント1】『ECBフォーラム』開会、ドラギ総裁のスピーチに注目
マイナス金利の効果を示し、利下げの準備に向かう?
6月17~19日、ポルトガルのシントラで『ECBフォーラム』が開催されており、ドラギ総裁のスピーチが注目されます。マイナス金利の正当性を示し、利下げの準備に向かうのではとの見方があります。
市場では、銀行の収益力を低下させ、金融システムの不安定化を招くなど、マイナス金利による弊害が限界に近づいているとの見方があります。しかし、金融データを冷静に見れば、必ずしも限界にあるとは言えない点に注意する必要があります。
【ポイント2】ドイツの銀行貸出は増加
銀行の純利息マージンは上昇傾向
ドイツでは、マイナス金利政策を導入した2014年以降、銀行貸出が増加傾向にあり、前年比2~4%の伸び率を示しています。また、欧州の大手銀行の純利息マージン(受取利息純額÷収益性資産残高)は、個別の銀行によって事情は異なるものの、2014年当初に比べ、総じて上昇傾向がみられます。
ドイツでみられるように、銀行はマイナス金利のコストを企業に転嫁すること(法人預金がマイナス金利)ができ、マイナス金利政策が強まるほど貸出を増やす傾向がみられます。マイナス金利によって銀行の利ざやが縮小し、貸出余力が低下したという証拠はなく、マイナス金利が貸出を抑制するとは言えません。
【今後の展開】世界的に利下げ圧力が強まる中、ECBが利下げする可能性はある
最近ECBから発表されたレポートでは、マイナス金利によって市場調達金利や貸出金利が低下し貸出が増加する、信用コストが低下するなどのポジティブな面を指摘しています。銀行だけでなく、企業もマイナス金利のコストを抑制するため、現金保有を減らし、投資を増やしているようです。
ECBは金融政策の正常化を早期に達成したいとみられますが、貿易摩擦による悪影響などから世界経済の減速が懸念され、低インフレが長期化するリスクが高まる中、世界的に利下げ圧力が強まっています。ECBのマイナス金利は限界に達しているとは言えないことから、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げした場合、ECBも利下げに動く可能性はあると考えます。