<今日のキーワード>

「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、市場開放措置や株価指数への組入れ拡大により、外国人投資家の関心が高まっている中国本土株(『A株』)です。

 

【ポイント1】香港と中国本土の相互取引で外国人投資家が増加

 外国人投資家の『A株』投資への関心が高まりつつあります。『A株』とは、上海と深センの両証券取引所に上場し、人民元建てで取引されている株式のことです。かつては、中国政府から認定された適格海外機関投資家のみが例外的にアクセスを許される特殊な株式市場でした。その『A株』市場も、過去数年で段階的に市場開放が進み、現在では、上海・深センと香港市場の株式相互取引制度を通じて、多くの外国人投資家が取引に参加できるようになっています。

 

【ポイント2】株価指数への『A株』組入れ比率拡大

 世界的な株価指数算出会社の米MSCIが、2017年6月に新興国指数への『A株』採用を決定したことも外国人投資家の関心を高めました。2018年には『A株』を組入れた指数の算出が開始され、『A株』の時価総額の5%がMSCI新興国指数に反映されてきました。この比率が、2019年の5月、8月、11月の3回に分けて、20%まで引き上げられることが、MSCIから発表されています。

 また、英国の指数算出会社のFTSEラッセルも、2019年6月に『A株』を主要株式指数に採用することを発表済みです。

 

【今後の展開】外国人投資家の増加で『A株』は洗練された市場へ

 2019年5月末現在、『A株』市場には3,622銘柄が上場しています(上海1,465銘柄、深セン2,157銘柄)。日本取引所グループ全体(東証、JASDAQなど)の上場会社数が3,664銘柄ですので、『A株』だけで日本の株式市場に匹敵する企業数となっています。

 従来、『A株』市場は短期売買志向の強い個人投資家が中心でしたが、外国人投資家の参加が増えるに連れて、徐々に洗練された市場になっていくと思われます。その過程で生じる数多くの銘柄選択の機会は、香港上場株とは異なる中国株投資の醍醐味の1つと言えそうです。