金融分野の「供給側改革」、中小零細企業の資金不足解消が課題
中国では直接金融より間接金融(銀行融資)の比重が大きく、「供給側改革」においてはこの分野の改革が最優先課題となっている。中小企業・零細企業が銀行融資をより利用しやすくすることや、正規融資システムにおける資金配分の効率化、非正規システムにおける資金コストの削減などが主な課題。BOCIはこうした問題を解消するには、市場重視型への改革と政府による中小・零細企業支援の双方が不可欠とみている。
中国では現在、正規の融資システムにおいて、中小零細企業の資金ひっ迫が問題となっているが、BOCIによれば、その理由は主に以下の3点。【1】国有企業や地方政府向け融資が優先されている、【2】中小企業の信用リスクの高さに加え、資金支援や信用システム面に不備がある、【3】預金・貸出金利が完全には市場化されていない中で、商業銀行の低リスク志向が強い。一方、いわゆる「闇の銀行」(シャドーバンキング)を含む非正規システムにおいては、現時点で融資全体の40%弱が中小零細企業向け。ただ、信用評価システムや情報面の不備で、ハイリスクプレミアムが生じているのが現状。こうした問題の解消が供給側改革における最大の課題となる。
BOCIは中小零細向け融資のひっ迫感の解消には、現在の資金ギャップに対する正確な評価が必要との見方だ。中小零細の信用リスクの高さや資金需給構造のミスマッチのほか、ゾンビ企業(経営破綻しているにもかかわらず、銀行などの支援で延命している国有企業)や休眠企業向け融資が高水準にある点が問題。BOCIの推計では、ゾンビ企業を除いた場合、融資の中小零細企業カバー率は30-35%と米国の70-80%を大きく下回る水準。中期的にこの割合を40-50%に引き上げることが理想という。
また、間接金融システムの効率改善に向けては、短期的に国有企業・地方政府と中小企業間のリスク調整後利回りギャップを埋めることが必要とみている。中期的には政府主導での段階的な金利自由化や市場主導型メカニズムの構築、中小零細企業への資金支援の拡大、公正の原則に沿った競争環境の整備、より完全で多層的な金融システムの構築などが必要になると指摘している。
この先、金利自由化が進んだ場合に予想されるのは、純金利マージン(NIM)の縮小や大手行の預金シェアの低下、個別の中小行のファンダメンタルズの乖離など。競争の中立化は大型商業銀行の競争力低下につながる可能性があるとしている。ただ、大手行が本来持っていたアドバンテージが弱まるとはいえ、中期的に見ても、全体としての安定感では引き続き、大手行が中小行を上回る見通しという。
個別銘柄では、BOCIは中国農業銀行(01288)、中国建設銀行(00939)、中国光大銀行(06818)、中信銀行(00998)の株価の先行きに強気見通しを付与。招商銀行(03968)、重慶農村商業銀行(03618)、中国郵政儲蓄銀行(01658)に中立見通しを示している。