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米連邦準備制度理事会(FRB)は、6/4、5の2日間にわたり、現行のFRBの金融政策戦略、ツール、およびコミュニケーション慣行などの見直しの一環として、外部の研究者や学術専門家などを招いて討議するリサーチ・カンファレンスを開催しました。この『カンファレンス』の議論を踏まえて、時間をかけてFRB運営の枠組みが検討される見込みです。『カンファレンス』では、パウエルFRB議長の冒頭挨拶に注目が集まりました。
【ポイント1】FRBの政策運営などについて討議
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月4、5日に、現在のFRB運営における金融政策戦略、ツール、コミュニケーションのあり方などを検討する『カンファレンス』を開催しました。FRBは今年に入り、金融政策レビューに関するイベントを既に6回開催し、国民の声を聞いてきました。今回の『カンファレンス』はこのイベントの一環ですが、今までと異なり外部の金融政策に関する専門家などを招いて金融政策運営に対する討議などが行われました。
具体的には、現在のFRBの金融政策の枠組みについての検証や、雇用最大化についての議論、市場参加者とのコミュニケーションが適切か(経済見通しやドットチャートの是非)、金融政策戦略(インフレ目標政策より優れた代替ストラテジーが存在するか否か)など7つのセッションと2つのパネルディスカッションにより構成され、討議が進められました。
【ポイント2】冒頭の挨拶でパウエル議長が貿易摩擦に対する対応に言及
『カンファレンス』冒頭の開会あいさつで、パウエル議長が足元の貿易摩擦に対して言及し、注目が集まりました。パウエル議長は、足元の貿易摩擦に関して、「いつ解決するかわからない」とした上で、経済見通しに与える示唆を「注意深く観察」し、「最大雇用と2%近傍のインフレ率を伴う物価安定のために適切な対応をとる」と述べました。
【今後の展開】議論の結果は来年前半に結論公表。政策金利は7月に予防的利下げ実施か
パウエル議長の発言を受けて、市場ではFRBの早期利下げ期待が高まっています。現時点で連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の多くは、米国経済はなお底堅いとの認識であると思われます。しかし、景気は良好と評価しつつも、米中通商問題による景気への下方リスクが高まった時点でFRBが予防的に動く準備があるという姿勢が、クラリダ副議長やブレイナード理事などFOMC参加者の発言からも窺えます。米中が合意に至るには時間を要する模様であり、このことから7月に利下げが実施されると見られます。
なお、今回の『カンファレンス』における討議の結果は、今年半ばから議論が進められ、来年前半に結論が出されます。パウエル議長も述べたように、ドットチャートが誤ったメッセージを発してしまいかねない点などは問題視されており、金利見通しの公表方法が変更される可能性があります。今後の議論が注目されます。