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 5月初旬中心に3月期決算企業の決算発表が行われましたが、その際『自社株買い』を発表する企業が大幅に増加しました。これはコーポレート・ガバナンス(企業統治)改革の進展で、1株当たりの利益や資産価値を向上させる目的で、『自社株買い』に資金を充てる企業が増えているためです。高水準の『自社株買い』を発表した企業を中心に株価が上昇した場合が多く、市場の関心も高まっています。今後の動向が注目されます。

 

【ポイント1】2019年度の『自社株買い』計画額は大幅に増加

『自社株買い』とは、企業が発行した株式を、その企業が市場の時価で買い戻すことをいいます。企業が買い戻した後に消却することで発行済み株式数が減少し、1株当たりの利益や資産価値を向上させる効果があります。

 コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革の進展で、資金の使い道を問う投資家の視線が厳しくなってきており、企業が資本効率改善と株主還元を進めた結果、『自社株買い』は大幅に増加しました。今年度の計画額は5月末時点で、QUICKのデータによると約3兆2,600億円、前年同期比約86%増加しました。

 

【ポイント2】大手企業の『自社株買い』も相次ぐ

 ディー・エヌ・エーは5月10日の引け後に上限500億円、発行済み株式数の26.1%(自己株式を除く)に相当する3,800万株の『自社株買い』を発表しました。ゲーム事業は競争が激しく、収益が伸び悩む中、高水準の『自社株買い』が好感され、発表後5月末までに株価は24.1%上昇しました。

 大手企業の『自社株買い』の発表も相次いでいます。ソニーは今年2度目となる上限2,000億円、発行済み株式数の4.8%(同)に相当する6,000万株を買い付けます。東京エレクトロンは2015年以来となる上限1,500億円、発行済み株式数の8.5%(同)に相当する1,400万株を買い付けます。

 

【今後の展開】『自社株買い』は今後も増加の方向

 2018年度の『自社株買い』は日銀の上場投資信託(ETF)の買い入れ額を上回り、日本株の重要な下支え役となっています。また『自社株買い』発表後に株価が上昇する企業が多く、株式市場の注目も高まっています。ただ『自社株買い』は米国に比べれば水準は低く、今後も増加するとみられます。一方で『自社株買い』ありきではなく、成長ステージや株価水準も十分検討した上で、中長期視点から『自社株買い』が実施されることが望まれます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。