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 トランプ米大統領は5月30日、国境の不法移民流入に関するメキシコ側の対策が不十分とし、制裁的にメキシコからの輸入品すべてに追加関税を課すことを表明しました。6月10日から5%でスタートする予定です。また、メキシコが不法移民の流入を抑制する効果的な対策を講じなければ、追加関税を7月以降、段階的に引き上げる方針が示されました。メキシコ経済に対する影響は大きく、その先行きが懸念されています。

 

【ポイント1】メキシコからのすべての輸入品に『制裁関税』

段階的に引き上げ、10月には25%へ

 5月30日、トランプ米大統領は国境の不法移民流入に関するメキシコ側の対策が不十分とし、制裁的にメキシコからの輸入品すべてに追加関税を課すことを表明しました。6月10日から5%の追加関税がスタートし、メキシコが不法移民の流入を抑制する効果的な対策を講じなければ、7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%へと段階的に引き上げる方針が示されました。

 トランプ米大統領は2016年の大統領選挙で不法移民の流入抑制を公約の1つに挙げており、市場では2020年の大統領選挙を見据えての措置と推測されています。

 

【ポイント2】自動車、農産物にマイナスの影響

米国経済にも大きな影響がでるおそれ

 米国向け輸出は、メキシコの輸出全体の約80%を占めています。そのため関税が上昇すれば、第1四半期にマイナス成長となったメキシコ経済が更に厳しい状況となることは必至です。

 一方、米国から見れば、2018年の米国の輸入に占めるメキシコのシェアは約13%と中国に次ぎ2番目です。そのうち主要品目である自動車は約31%、農産物・畜産物が約21%となっています。『制裁関税』は、メキシコからの輸入品の価格上昇圧力となり、販売価格に転嫁され米国消費者の購買力を抑制するか、転嫁されなければ米国企業の収益を圧迫する要因となります。

 

【今後の展開】『制裁関税』第一弾は実施の可能性も、早期の対策が期待される

『制裁関税』を受けてメキシコのロペスオブラドール大統領やメキシコ国内からは反発は強いものの、合意は可能として両国協議が始められています。しかし、トランプ米大統領が「国境の壁」問題で見せた強硬な姿勢を再び見せる可能性は高く、対話を求めるメキシコに対し行動を望む米国との協議の先行きは予断を許しません。

 一方で、トランプ米大統領は経済面でマイナスの影響が大きいことは望まないとみられ、これまでのように協議の進捗を見ながら『制裁関税』の猶予や延期をする可能性も十分にあると思われます。そのため、今後の両国の協議の進展とトランプ米大統領の発言を注視する必要があります。