■60代前半:60歳になったらできるだけリタイアを先送りできないか考えてみる

 60代前半は、「あと5年」やりくりさえすれば、65歳から標準の年金額がもらえると考えるか、「もう5年」仕事を頑張って、65歳からリタイアしようと考えるかどうかで、世界がずいぶん違って見えます。

 まず「あと5年」の発想です。これは60歳リタイアも視野に入れた考え方ですが、1年あたり300万円でやりくりしても、5年で1,500万円が消えていきます。多くの場合、退職金が枯渇することになるでしょう。65歳から手元資金がほとんどない状態で、公的年金のみでやりくりする数十年がスタートすることになります。退職金以外に相当の余裕を作っておいた人だけが乗り切れると考えましょう。

「もう5年」働くと考えるのは、年収が50代より減少したとしても、これが基本だと考えたほうが良いと思います。むしろ「退職金に手をつけずに5年暮らせればいいのだ」というくらいで仕事に臨めばいいでしょう。

 もちろん50代と遜色(そんしょく)ない年収を得て、65歳まで駆け抜けることができるなら、しっかり働き、しっかり稼いだ分を65歳以降のために上積みしてください。

■60代後半:65歳になったら自由にリタイア時期を決められる

 社会保障審議会の年金部会や政府の未来投資会議などは、公的年金の受給開始年齢を一律引き上げることを検討課題から下ろしつつあります。「現在:60~70歳の間で受取開始年齢を決められる」について将来は70歳以降のレンジを広げ、例えば「将来:60~75歳の間」のように選択肢を多様化させていく方向感です。

 これはつまり、「65歳以降」については無年金の心配はあまりなく、雇用条件と働きがいをバランスさせながらリタイア年齢を決められるということです。

例えば
  ・高所得で働けるなら働く
  ・低賃金だがやりがいがあるので働く
  ・ほとんど無収入だが社会貢献で働く
  ・健康も考慮しながらリタイアを決める

上記のような選択肢を1年刻みに判断しても良いわけです。

公的年金についても
  ・65歳からもらい始める(仕事の収入と合わせて生活資金とする)
  ・可能な限り繰り下げて増額を目指す

の選択ができるだけでも、自由度が高いといえます。

 ちなみに公的年金水準は、マクロ経済スライドの実施が行われると低下していきます。この低下分を補うことを考えるのであれば、67~68歳くらいまでの繰り下げを頭にイメージしておきながら、リタイア年齢を決められると理想的ではないでしょうか。

■まとめ:リタイア年齢はできるだけ、自分で決める

 ここまで世代別にポイントをまとめてみましたが、カギとなるのは「自分の人生、自分のリタイア年齢は、自分で決められるようにする」ということかもしれません。

 半強制的に会社にリタイア年齢を決めさせられるとか、逆に経済的安定が得られないため70歳を過ぎてもアルバイトせざるを得ないような状態になるのは、自分で自分の人生をコントロールできていなかったツケでもあります。

 経済的に備えることはもちろんですが、自分がやりたい仕事をできるよう、人のつながりやネットワークを活かして立ち回るようなことも、リタイア前後では必要となることがあります。

 自分の引き際を上手にコントロールして、後顧の憂い(こうこのうれい)なくリタイア、リタイア生活をスタートさせたいものですね。