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『米中摩擦』が激化・長期化しており、市場でも大きな関心を集めています。そこで本レポートでは、シリーズで『米中摩擦』の過去、現在、未来を考察していきます。1回目の今回は、中国が「改革開放」政策を実施してから製造業を中心に経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国となるまでの経緯をみていきます。
【ポイント1】「改革開放」政策、WTO加盟が中国経済の転機に
段階的に市場経済化が進展
中国は1978年に「改革開放」政策を打ち出し、それまでの閉鎖的な体制から、外国の技術や資本を積極的に受け入れる体制に転じました。産業面では、加工貿易を推進し、輸出を志向した工業化を進める方針に転換しました。
2001年には世界貿易機関(WTO)に加盟しました。WTOは貿易に関する様々な国際ルールを定めている国際機関です。WTOに加盟するには、貿易の自由化のために、関税の引き下げやサービス業の開放などを実現していくと約束することが求められます。したがって、WTOに加盟することは、経済の自由化やグローバル化を進めるという公約を世界に示すことであり、外国企業にとっては中国における投資機会の拡大を意味すると考えられます。
【ポイント2】WTO加盟を機に「世界の工場」に
経済規模では世界第2位に
2001年のWTO加盟は外国からの資本を引き寄せました。中国への外国からの直接投資(FDI)はWTO加盟前の2000年には408億ドルでしたが、WTO加盟後に増加傾向をたどり、2018年には3.4倍の1,383億ドルとなりました。
WTO加盟後、FDIの増加もあって、中国の輸出額は大幅に増え、世界に占めるシェアも高まりました。2000年には2,492億ドル(シェア5.2%)でしたが、2017年には2兆2,634億ドル(同16.2%)となりました。
製造業の発展を原動力に中国の経済規模も急速に拡大し、2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国となりました(第1位は米国)。2018年の中国の名目GDPが世界に占めるシェアは15.8%となっており、24.2%の米国とあわせると4割に上ります。
米国としては、中国の経済的な存在感が増していること自体が脅威に映ると考えられますが、これに加えて、目下進行中の『米中摩擦』に関しては、トランプ政権が「米国の対中貿易赤字の大きさ」についても問題視しています。