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 日本の株式市場は、米中貿易摩擦の一段の激化などを懸念して、不安定な動きが続いています。こうしたなか日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割った両指数の相対的な強弱を示す『NT倍率』は、2006年以降緩やかに上昇してきましたが、2018年以降上昇が加速し始め、今年の5月9日には13.8倍まで上昇しました。ここでは『NT倍率』の上昇の要因と今後の動向を検討してみたいと思います。

 

【ポイント1】『NT倍率』は13.8倍まで上昇

『NT倍率』は2005年には10倍を下回っていましたが、その後は緩やかに上昇しました。2018年に入ると上昇が加速し始め、今年の5月9日には13.8倍まで上昇しました。『NT倍率』は、日経平均先物買い、それに伴う裁定買いで上昇する場合や、値がさ株や輸出関連株が相対的に上昇する場合などに拡大する傾向があります。2018年からの上昇が加速した要因について検証してみます。

 

【ポイント2】『NT倍率』上昇は構成比上位銘柄の株価上昇が影響

 まず、ネット裁定買い残は1億株程度と過去の最低に近い水準まで減少しており、先物買いによる上昇ではありません。また、内需関連株の方が総じて上昇率が大きく、電気機器などの輸出関連株主導の上昇でもありません。

 日経平均株価の構成比をみると上位銘柄の構成比が一段と上昇しており、ファーストリテイリングが11%を上回るなど、225銘柄の内上位20銘柄で約50%を占めます。このため構成比の高い銘柄の影響を大きく受ける状況にあります。構成比率上位のファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、資生堂などの株価がこの間上昇しており、これが『NT倍率』の上昇の主因となっています。

 構成比の高い銘柄は日銀の保有比率が高く、日銀のETF買い(一部は日経平均型)の影響もあるようです。

 

【今後の展開】『NT倍率』は高水準継続の方向

『NT倍率』は高水準にありますが、ネット裁定取引残高は過去最低水準に近く、ファーストリテイリングの信用取引残高は大幅な売り超となるなど、『NT倍率』に過熱の兆しはみられず、当面高水準が続く可能性が高いとみられます。また、現在東証の市場区分の見直しなどが議論されていますが、『NT倍率』の上昇が続けば、この議論にも影響を与える可能性もあるとみられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。