今回の追加関税予告。投機筋には格好の儲けネタだった?

 ただし、米中貿易摩擦を最大の焦点にした5月第1週。なぜ日経平均株価が913円下げたのか? その需給的背景を見ていくと、実際のプレーヤーたちがそこまで先のことを考えて動いていたとは到底思えない実情もありました。単に、短期売買を繰り返すヘッジファンドなど投機筋が「米中摩擦ネタを使って一儲けしようとしていただけでは?」。そう思える要素が満載でもありました。

 今回は、「5月10日」という具体的な日程まで提示されていました。ターゲットをこの日に定められるトレードイベントです。とはいえ、ブラフを多用するトランプのことだから、どうなるかはわからない・・・。報道を見ていても「まだわからない」一色でした。

 その中にあって、どちらかに決め打ちして、買い向かったり、売り向かったりしていた投資家が多かったとは到底思えないわけです。その中で起きた価格変動のメイン主体は、短期筋のイベントドリブンが中心。これは、いつものことです。

 そう断定できる形跡がデータとしても出ています。まず、中国経済のダメージになる話ですので、日本株でいえば“中国関連株”がより下がりやすい投資対象といえます。ただ、投機筋ですので、日本の中国関連株の買いポジションを持ってはいないわけです。

 だから・・・「借りて売る(=空売り)」。流動性の高い中国関連株(安川電機、ファナック、コマツなど)を複数バスケットで空売りし、一方で過去の中国株安局面に逆相関していた銘柄群をバスケットで買うペアトレード(ロングショート)を行うクオンツファンドが多いと聞きます。

 東証1部の空売り比率は、
7日(火)44.9%→8日(水)46.1%→9日(木)47.5%→10日(金)49.2%
と連日上がり続けていました。

 昨年もありましたが、「なぜか中国株より日本株のほうが下げるな」と感じる方も多いと思いますが、これも日本株市場の特性が利用されている結果です。同じアジア時間で取引されているわけですが、日本のほうが株の流動性が高く、空売りが自由にできます。

 そのため、中国株を空売りする替わりとして、日本の中国関連株が空売りされることで奇妙なパフォーマンス差が生じます。ですので、リバウンドするときも日本株の戻りが強く出るわけです。