上場している会社の規模はさまざまです。時価総額が1兆円を超える大企業から、100億円に満たないベンチャー企業までいろいろあります。そのなかでも、会社規模の小さい「小型株」の株価が堅調です。

 今回は小型株の魅力と、投資する際の注意点についてお伝えします。

「小型株」ってどんな株?

 上場株式は、その規模に応じて「大型株」「中型株」「小型株」に区分されます。一般的には発行済み株式総数により分けられますが、最近はそれよりも、時価総額(株価×発行済み株式総数)の大きさにより、区分されるほうが企業実態を表しているように思います。

 実は、「大型」「中型」「小型」の明確な定義はなく、何となくイメージで使っていることも多いようです。今回のコラムでは、時価総額が1,000億円以下の銘柄を「小型株」とします。

 時価総額が小さいため、必然的に、マザーズやジャスダックなど、新興市場銘柄が大部分を占めることになります。

 言い換えれば、「新興市場銘柄≒小型株」と考えてもよいかもしれません。

小型株の魅力(1)業績拡大の余地が大きい

 小型株にはどのような魅力があるのでしょうか? 

 第一に「業績が拡大する余地が大きいこと」が挙げられます。

 たとえば、現在1兆円の売上高がある会社が、売り上げを10倍の10兆円にすることは至難の業です。

 でも、現在売上高が10億円の会社が10倍の100億円になる可能性は結構あります。特に、今までなかったような新しい切り口のビジネスモデルであれば、マーケット自体が拡大していく可能性が多分にあり、短期間で売り上げが大きく増加していくという期待が持てます。

 また、小型株の多くがベンチャー企業です。ベンチャー企業は内需型のビジネスモデルであることが多いため、為替レートが円高になったとしても業績への悪影響はありません。会社自体の努力では対処しようもない理由による業績の変動のリスクが小さいのです。

 そして、売上高が大きく増えれば、通常は利益も増えます。利益が増えれば企業価値もアップし、株価も上昇していきます。

小型株の魅力(2)単一事業などビジネスモデルがわかりやすい

2つめの魅力は、「ビジネスモデルがわかりやすい」ということです。

企業の規模が大きくなると、通常は事業の多角化を進めます。そのほうが、単一事業のみに注力するよりもリスク分散になるからです。

 ある事業が不調でも他の事業でカバーし、トータルで利益を得ることができるようになります。

 でも、これは投資家の立場から見るとなかなか厳しいものがあります。なぜなら複数の事業を同時に行っている会社は、企業価値やファンダメンタルの分析が非常にやりにくくなるからです。

 プロでさえも大企業のファンダメンタル分析には苦労していますから、個人投資家が適切な分析をするのは至難の業です。

 一方、小型株はまだ売上規模も小さいので、1つの事業に経営資源を集中しているケースが多いのです。そのため、ファンダメンタル分析が大企業に比べて圧倒的にやりやすい、というメリットがあります。

 たとえば飲食業の場合、どれだけ出店すれば売り上げがどのくらい増えるかという予測が立てやすくなります。単純に、既存店の売り上げを店舗数で割ってしまえば1店舗当たりの平均売上がざっくりと計算できるからです。

 まだ関東にしか出店していないなら関西への進出の可能性もありますし、日本国内だけでも大きな成長の余地があると考えることができます。

小型株の注意点(1)事業が悪化したときのダメージが大きい

 小型株投資には気をつけておきたい点もあります。

 まず1つめは、魅力(2)の裏返しなのですが、単一事業であることが多いので、その事業が悪化した場合にストレートに業績への影響が及びます。

 そのため、昨年度は大幅黒字だったものが、今年度は一転して大赤字、ということも珍しくありません。

 たとえば飲食業の小型株の場合、一時のブームに乗って業績が伸び、株価も急上昇することがよくあります。

 それを「業績悪化は一時的で、まだまだ伸びる」と高をくくっていると、ブームが去って赤字拡大、株価も大幅下落で回復せず、ということになりかねません。

 株価のトレンドを注視して、下降トレンドに転じたような場合はいったん売却して様子を見る、ということが必要です。

小型株の注意点(2)株価が乱高下しやすい

 もう1つの注意点が、株価が乱高下しやすいということです。注意点(1)と多少かぶりますが、単一事業であることが多いため、業績が悪化した場合、株価が大きく下落するリスクも必然的に高まります。

 また、需給面の要因から見ると、小型株の多くは「空売り」ができません。

 株価が短期間に大きく下がるような場合、大型株であれば空売りの買い戻しが随所に入りますので、比較的穏やかな下げになります。

 しかし、小型株の場合は空売りの買い戻しが入りませんので、下げも一方通行、かつきついものになりがちです。

 こうした面からも、株価のトレンドが下向きに変化したにもかかわらず、ねばって保有を続けることは大きな損失を被るリスクが高まると認識してください。

結論:小型株は資金を一極集中せず適度な分散投資を

 小型株の場合、とにかく株価が大きく乱高下しますから、1つの銘柄に資金を集中させるのは非常にリスクの高い行為になります。

 できれば10銘柄ほどに資金を分散して、株価急落リスクを軽減しておく必要があります。

 また、小型株はいっせいに株価が下がることがあり、そうなるといくら複数の小型株に資金を分散させていても、結局は大きく資金を減らすことになってしまいます。

 常にある程度はキャッシュを温存しておくか、大型株にも資金の一定割合は投資しておくなどして、大きな損失を被らないような準備を事前にしておくことをおすすめします。