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中国では新エネルギー車(New Energy Vehicle、『NEV』)が急増しています。2018年の中国の自動車販売全体は2,808万台と前年比2.8%減でしたが、『NEV』は同61.7%増の126万台と大幅に伸びました。この背景には中国政府が推進する『NEV』シフトに向けた自動車登録規制や販売助成金、メーカーへの補助金等があります。この度、地元政府が強力に支援を行う深セン市を訪れましたので、その状況をリポートします。
【ポイント1】深センのバス・タクシーはすべて『NEV』
深センで目にした路線バスやタクシーは、すべて、『NEV』の中心となる電気自動車(EV)でした。
2010年から『NEV』の普及を推進してきた深セン市は、路線バスのEV化を2017年末に実現しました。深セン市は今年1月、市内で営業するタクシーのうちEVが2万台を超え、目標としていた100%EV化を「基本的に達成した」と宣言しています。中国のイノベーション拠点である深セン市は、充電施設の整備に加え、信号機などと車を連携させるスマートシティへの構想も進めています。
【ポイント2】『NEV』メーカー最大手のBYDを訪問
深セン市に本社を構える、『NEV』メーカーの最大手の比亜迪(BYD)を訪問しました。元々電池メーカーだったBYDは深セン政府の手厚いサポートを受け、今や『NEV』のトップ企業に成長しています。深セン市のバスやタクシーはどれもBYD製です。
BYDの広報担当によれば、中国景気減速の中でも、『NEV』の高い成長は続く見通しです。今後予定される、政府からの販売助成金が減少しても、「最大航行距離の伸長や充電時間短縮など『NEV』の性能向上が消費者をひきつける」と強気でした。
【今後の展開】『NEV』で中国の存在感がますます高まる
中国政府は、ハイテク産業育成策「中国製造2025」で『NEV』を重点分野に指定し、2025年には新車販売の2割以上を『NEV』にする計画を掲げています。政府方針の下で、『NEV』に関連する補助金のほか、各種規制が実施されています。大都市では、ナンバープレートの交付規制により、初めて車を買う人は実質的に『NEV』以外購入しにくいうえ、交付規制の対象都市は広がる予定です。さらに、今年から、自動車メーカーが中国での生産・輸入量に応じて一定比率(2019年は10%、20年は12%)の『NEV』を製造販売しなければならないという規制が導入されました。これらの規制を背景に、世界最大の自動車市場である中国では、今後一段と『NEV』シフトが進展することが確実と言えます。深センで進む『NEV』シフトを目の当たりにすると、性能向上やデータ蓄積により、『NEV』分野での中国の存在感がますます高まると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。