IMFと世界銀行の見通し比較で浮き彫りになる経済減速
世界銀行は、米国について2019年の成長率を2.5%とIMFと同じ見通しですが、2020年は急減速すると予測し、IMF(1.8%)より低い1.7%としています。貿易戦争で輸出と投資が下振れし、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げも影響すると分析しています。
欧州については2019年の成長率を0.1%下方修正し、1.6%とIMFと同じ見通しです。しかし2020年は、IMFは1.7%に持ち直すとしていますが、世界銀行は1.5%と2019年よりさらに減速すると分析しています。
日本についてもIMFより厳しい見通しとなっています。2019年は消費税引き上げの対策によって増税の影響を一時的に緩和できると分析し、前回より0.1%上方修正していますが、IMF(1.1%)より低い0.9%の成長としています。
一方、日本政府は1月28日に2019年度の実質成長率見通しを1.3%と発表しました。消費税増税対策で個人消費は伸び、外需は横ばいとしていますが、IMFや世界銀行よりもかなり高めの成長となっているのは、気になるところです。
これらの経済見通しでは、やはり米国と中国の成長見通しが注目されます。中国の成長については6.2%とIMFも世界銀行も同じ見通しとなっています。世界銀行は、貿易戦争の影響を和らげるため、中国当局は緩和的な金融政策や減税拡大で内需の底上げを図っていると分析していますが、最近発表されている米国のグローバル企業の決算を見ていると、現状で既に6.2%より低いのではないかと懸念されます。
そして米中貿易協議がまとまらない場合は、一段と減速することが予想されます。逆に協議がまとまると、その報道で株は上がりますが、これまでの追加関税が撤廃されない限り、現状の経済環境が続くという点には留意しておく必要があります。
米国については、貿易問題の他にFRBの金融政策が焦点となります。
1月31日(日本時間午前4時)に発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文や、その後のパウエルFRB議長の記者会見に世界中が注目しています。
今年に入って、パウエル議長をはじめFRB高官たちが利上げや資産縮小について柔軟な金融姿勢を示し始めていますが、FOMCの声明文や記者会見で、その方向性を明言するかどうかに注目です。柔軟姿勢をはっきりと示せば、株式市場は歓迎し、経済にとってもプラス材料となることが予想されます。ただし、ドル/円にとってはドル売り材料となるため注意が必要です。