日本株式は「チャイナリスク」を強く警戒
新年の日本株の戻りは米国株に比べ劣勢でしたが、今週は上値がさらに重くなりました。相場の重石となっているのが「チャイナリスク」(中国の政治・経済リスク)です。図表1は、中国経済政策不確実性指数と日本の中国関連株(日経中国関連株指数)の推移です。
「中国政策不確実性指数」とは、香港メディアを代表する英字紙「The South China Morning Post」が経済政策面の不確実性に言及した頻度をもとに中国の政策不確実性を数値化した指数です。同指数と中国関連株の関係を相関係数(月次)で振り返ると、2014年以降で▲0.29、2018年は▲0.49と「逆相関」でした。
日経中国関連株指数は、中国で積極的に事業展開を進めている日本企業50銘柄で構成される時価総額加重平均指数です。チャイナリスクが高まると、収益の中国依存度を増やしてきた関連株の業績面の不安が大きくなります。海外展開を進めてきた日本の多くのグローバル企業の業績見通しは、濃淡の差はあれ「中国の景気鈍化や設備投資需要の減退」から影響を受けやすくなっています。
加えて、米トランプ政権の強硬外交や貿易政策の影響を受け、中国経済政策不確実性指数は2018年末に史上最高水準に上昇。今後発表される10~12月期企業決算、業績見通し、株価の反応、米中貿易交渉の進展を確認し、チャイナリスクの影響度と株式市場の織り込み度合いを見極める必要があります。
図表1:チャイナリスクと日本の中国関連株は逆相関
中国需要減退で日本の製造業景況感が鈍化
中国の習近平国家主席は1月21日、閣僚や地方政府幹部を招集した異例の会議を開催。習主席は、「共産党が長期で複雑な試練に直面している」との危機感を述べ、「政治的安定を維持する必要性」を強調しました。米中貿易紛争の激化で、中国景気の鈍化は加速しており、社会的な騒乱に発展することを危惧した中国指導部の引き締めとみられています。
実際、2018年の実質GDP(国内総生産)成長率は+6.6%と28年ぶり低水準となりました。特に貿易紛争から悪影響を被る中国製造業の不振が日本の製造業に与える影響が警戒されています。
図表2が示す通り、中国の製造業PMI(購買担当者景気指数)は景況感の分岐点とされる50を割り込み、日本の製造業PMIの低下圧力となっています。米国との貿易紛争激化は、中国の輸出型製造業の業績不振につながり、サプライチェーン(中国向け部材供給)や設備投資需要の鈍化を介し、関連日本企業の業績見通しに下方圧力となっています(昨年10月以降の例:ファナック、SMC、東京エレクトロン、アップル関連、安川電機、日本電産など)。
トランプ政権が中国IT関連企業の製品を「安全保障上の理由」で同盟国市場から締め出そうとしている動きも、日本の産業界に影響を与えています。
1月15日に東京商工リサーチが発表した調査によると、2018年の日本における「チャイナリスク関連倒産」は48件(負債総額は約232億円)でした。日本企業にとっての従来のチャイナリスクは、中国国内での賃金コスト高騰、労使問題、中国当局による規制、政治リスク、成長率鈍化などでしたが、最近は「米中貿易紛争の激化に伴う需要鈍化」が警戒要因に加わってきました。