バイロン・ウィーン氏による「2019年サプライズ10大予想」
1 | 世界経済が弱まり、FRBが利上げを停止。インフレは抑制され、10年債利回りは3.5%に達せず |
2 | S&P 500は15%の上昇 |
3 | 2021年より前に景気後退は起きない。消費者・政府の支出により景気拡大が続く |
4 | 米国、他の株式市場が回復し、金は1,000ドルまで下落 |
5 | 新興国市場の企業収益見通しが改善し、投資家の関心が強まる。上海指数は25%上昇し、新興国市場の上昇を主導 |
6 | 3月29日を過ぎても英議会はEU(欧州連合)との離脱協定を承認しないが、メイ英首相は続投。2回目の国民投票が実施され、英国のEU残留が決まる |
7 | 年間を通して、ドルは2018年末の水準で安定。FRBはバランスシート縮小を停止し、ドル安要因に。金融政策の軟化と企業の資金需要の欠如から、米国への資本流入が鈍化 |
8 | モラー米特別検察官の捜査によりトランプ米大統領の側近が起訴されるが、大統領が直接関与した証拠は見つからない。しかし、大統領が最も信頼するアドバイザーたちが去り、ホワイトハウスの政権運営能力が疑問視される |
9 | 民主党多数の下院は、特に通商政策において期待を上回る成果を上げる。オバマ・ケアや移民政策の重要部分は維持され、2020年のインフラ支出実施が発表される |
10 | 米市場では引き続きグロース株が主導する。テクノロジーとバイオの企業収益改善が続き、米株式市場をけん引 |
これらの予想を景気と金融市場の観点を踏まえると、次のようになります。
・FRBは利上げを停止し、インフレは3.5%未満に
・米国株は利上げ停止を好感し、15%の上昇。上海株も25%上昇し、新興国市場を主導
・米景気は拡大が続き、景気後退は2021年以降
・ドルは2018年末の水準で安定
・FRBはバランスシート縮小を停止し、ドル安要因となり、米国への資本流入が鈍化
今年も米国経済や株について強気の見方のようです。しかし、例年と比べるとサプライズ度合いは低く、強気のエコノミストとあまり変わらない予想です。強いて上げれば、上海株の25%上昇がサプライズです。
また、ドルの水準が昨年末の水準で安定するという予想もサプライズです。利上げを停止し、資産縮小も停止するのであれば、かなりドル安になるのではないかと予想されるのですが…。
留意すべき4つのリスクシナリオ
ウィーン氏は10大予想以外にも、それほど重要ではないもの、実現可能性が高くないものとして、さらに4項目を挙げています。
1 | 地政学的緊張が高まる。イランと北朝鮮は火種であり続けるが、米国大統領選挙が近づく中で実際の戦争には発展せず、トランプ大統領の強弁がいくつかの外交課題で成果を上げる |
2 | 切羽詰まった中国がインフラ政策で経済を刺激し、実質成長率6.5%を達成するが、債務問題を世界が懸念し、人民元に悪影響が及ぶ |
3 | 中国が「世界の自由貿易のリーダーになる」と宣言。世界における中国の影響力が増し、米国はさらに孤立する |
4 | イタリアの反抗、ドイツの鈍化、Brexit(ブレグジット:英国のEU離脱)に対応し、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を再開 |
実現可能性が高くないものとして、人民元の悪影響、米国のさらなる孤立、ECBの量的緩和を挙げていますが、相場シナリオを想定する際にはリスクシナリオとして留意しておく必要がある項目です。
また、10大リストの中のBrexitに関する合意なき離脱や2回目の国民投票なども、サプライズではなく、リスクシナリオとして留意しておく必要がありそうです。
このように、注目されている予想を参考にすることによって、自分の予想と照らし合わせ、どの程度サプライズなのか、どの程度リスクがあるのか、自分の予想を吟味するための材料として活用することができます。そしてリスクが発生した場合に為替はどのように動くのか、事前にシミュレーションをしておくことは、「いざというとき」に慌てずにすむため、重要です。