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 国際通貨基金(IMF)は年に2回(4、10月)、世界経済に関する中長期的な予測を発表しています。加えて、1月および7月には改訂版を発表しています。1月21日に発表された『IMF世界経済見通し』改訂版では、欧州や新興国の成長率が想定より伸び悩んでいることを背景に、2019年、20年の見通しが下方修正されました。また、下方リスクとして米中貿易摩擦などが挙げられています。

 

【ポイント1】2019年の世界成長見通しは▲0.2ポイント下方修正

先進国、新興国ともに下方修正

『IMF世界経済見通し』によると、2019年の世界成長率は3.5%と、昨年10月時点の見通しから▲0.2ポイント下方修正されました。昨年10月時点でも▲0.2ポイント引き下げられており、2回連続での下方修正となりました。

 国・地域別では、先進国が▲0.1ポイント、新興国は▲0.2ポイント下方修正されました。特に、ユーロ圏が▲0.3ポイント(ドイツ▲0.6ポイント、イタリア▲0.4ポイント)と、欧州地域が大きく下方修正されました。日本は、消費増税に対応する景気対策効果が見込まれるとして、0.2ポイント上方修正されました。米国は据え置かれました。

 

【ポイント2】減速傾向が目立つ欧州

「貿易摩擦」、「中国経済の減速」、「Brexit」の3つのリスクを指摘

 今回の見通しでは、排ガス規制強化により自動車産業が伸び悩むドイツや、財政リスクを反映したイタリア経済の落ち込みに加えて、金融市場の心理悪化やトルコ経済の縮小などが下方修正の理由として挙げられています。

 また、IMFは世界経済のさらなる下振れリスクとして、米中貿易摩擦の拡大や中国経済の想定以上の減速、英国が合意なしの「欧州連合(EU)離脱」(Brexit)に踏み切る可能性の3つを指摘しました。

 

【今後の展開】年後半にかけて持ち直し

 米中貿易摩擦においては、米中間で90日間の協議が行われていますが、ハイテクの覇権争いなどの分野での妥協は困難とみられます。ただし、米国は金融市場の更なる不安定化を避けるため、明確な対立の激化を避けると考えられます。また、減速傾向にある中国景気の先行きについては、中国当局が景気刺激策をより拡充することで、年後半から持ち直す可能性が高いと考えられます。下振れリスクはあるものの、世界経済の減速は限定的なものになると見込まれます。