「業績予測」の研究も可能に?

──現在、「CEES」は一般にも開放していて、誰でも自由に使えるようになっていますが、反響はどうですか。

 あまり告知していないので利用者は限られますが、評判はいいですよ。個人投資家の方々だけでなく、機関投資家の方も、自分が担当する企業を調べるのに使っているようです。

──新しい機能を加える予定はありますか。

 はい、いくつか考えています。例えば決算短信には業績予測に関する記述もあるんですね。「来期はこれだけの売上げを見込んでいます」などといったものです。ですから、こうした文も抽出できるようにしたい。業績予測に関する文の抽出は、現在の業績を示す表現よりも手がかりとなる表現が多様なのでいろいろな工夫が必要なのですが、これもディープラーニングを活用することで突破口が開けそうです。

──今やテキストマイニングはさまざまな分野で使われていますが、そのなかにはツイッターなどソーシャルメディアに大量に投稿されるつぶやきや、ネットの掲示板などから有益な情報を抽出するという動きも出始めています。現在、酒井先生は決算短信を使われていますが、ほかのテキストデータの活用も視野に入れているのでしょうか。

 例えば、経済新聞記事やアナリストレポート、あるいは有価証券報告書なども利用価値は高いと思います。私も経済新聞記事を使った研究を行ってきましたし、アナリストレポートを使った研究も現在、行っています。それらを使ったテキストマイニングの開発を行っている研究者もいます。

 ソーシャルメディアのつぶやきやネットの書き込みに関しては、研究してみる必要はあると思いますが、書き込み内容の真偽の判定など、難しい問題があります。

──今後、AI技術が進化を遂げればさらに可能性が広がっていきそうですね。

 それは間違いないでしょう。

──では、本日はありがとうございました。今度「CEES」を使ってみますね。

 はい、ぜひ、試してみてください。どんなキーワードでも関連する企業が検索できますし、投資先の選定などに利用価値は高いはずです。

 

<プロフィール>

成蹊大学理工学部情報科学課准教授
酒井 浩之氏

 2005年 豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程(電子・情報工学専攻)修了。工学博士。同大学の知識情報工学系助手を経て、2012年、成蹊大学理工学部情報科学科の講師。2014年、同大学理工学部情報科学科准教授となり、現在に至る。

 

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