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今年は、ドイツのメルケル首相の与党党首辞任や、イタリアでのポピュリズム政権の誕生、英国の欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)の交渉難航など、『欧州の政治不安』が世界的にもリスク回避姿勢の強まりへと影響しています。2015年に深刻化した難民問題に端を発する欧州でのポピュリズムの台頭は、現在、欧州主要国での既存政治を揺るがすものとなっていますが、この政治的な不透明感は来年にかけても続きそうです。
【ポイント1】ドイツ、イタリア、フランス・・・広がりを見せる『欧州の政治不安』
ドイツでは、州議会選挙での与党連敗を受け、メルケル首相が与党党首を降板、後継党首に親メルケル氏のクランプカレンバウアー氏が選出されました。メルケル首相は2021年の任期満了まで首相続投を表明していますが、当面不安定な政局が続きそうです。イタリアでは、今年誕生したポピュリズム新政権による財政拡張的な2019年予算案が、財政赤字の拡大懸念を生みました。欧州委員会による制裁手続き入りも懸念されましたが、イタリアが当初案よりも財政赤字幅を縮小させたことで同予算案が承認され、緊張は緩和しました。
足下では、フランスでマクロン政権の改革への抗議デモが全国に及び、ベルギーでは移民政策への抗議運動が起こり首相が辞任するなど、ポピュリズムの台頭による『欧州の政治不安』は広がりを見せています。
【ポイント2】Brexit交渉は難航、英国内では深刻な意見分裂
2019年3月末にBrexitを予定する英国では、離脱交渉が難航しています。11月にようやくEUとの間で暫定合意した離脱協定案は、議会採決での否決の可能性が高まり、採決が1月に延期になりました。EUは離脱協定の再交渉には応じない姿勢を示しており、英国内でいかに離脱法案の可決に向けて意見をまとめるかが鍵と見られます。
今月中旬に実施されたメイ首相の与党党首信任投票では、メイ首相が勝利するも政府想定よりも多くの不信任票が集まり、党内の内部分裂が改めて示されました。これまでのBrexitの交渉を巡っても閣僚の辞任が相次いでおり、英国内の意見分裂は深刻な状況です。
【今後の展開】既存政治を揺るがすポピュリズムの影響は2019年以降も続く?
2015年に欧州で難民問題が深刻化して以来、高まるポピュリズムはドイツ、イタリア、フランス、ベルギーなど欧州の主要国で存在感を高めています。一方で、英国は2016年に国民投票でBrexitを選択したものの、離脱案可決への道は険しく、再国民投票の可能性も考えられる中、一部の世論調査ではEUへの残留支持は国民投票以来最も高まっています。『欧州の政治不安』は、ポピュリズムの台頭による既存政治の揺らぎとも捉えられますが、揺らぎにとどまらず新潮流となっていくのか、2019年以降もその動向に注目です。