FOMC声明文:市場期待ほど「ハト派」でなかった

 利上げの実施自体は市場予想通りでサプライズありません。市場の注目点は、FOMC声明文とパウエルFRB議長の発言が、タカ派的(利上げに積極的)か、ハト派的(利上げに消極的)かにありました。

 FOMC声明文は9月と比べると、「ややハト派」でしたが、市場の期待に比べると、「ややタカ派」だったと言えます。米経済の現状について「労働市場は引き続き力強さを増し、経済活動は力強く拡大した」と認識しているのは、前回とまったく同じです。米経済は好調で、「FF金利をさらに若干、段階的に引き上げることが妥当」としています。

 前回は、「今後もゆるやかな利上げが続く」としていましたので、「若干」が加わった分、「ややハト派」になったと言えます。ただし、市場では今後の利上げに対する言及がなくなるとの期待もありましたので、市場の期待と比べると「ややタカ派」だったと言えます。

パウエル議長会見:景気の先行き懸念を含む割に、期待ほど「ハト派」でなかった

 パウエル議長の発言は、市場の期待と比べてややタカ派と捉えられました。景気動向について「数カ月前の予想に比べて軟化を示唆する動きが出てきた」と述べ、海外経済の減速、株式市場の下落を警戒的に見ていると話しました。とはいえ、基本的な見方を変えたわけでないことを強調し、中立水準に向けて利上げを続けるべきであると話しました。

 景気減速のリスクを認識しながら、利上げを続けるスタンスを示したことになり、それが株式市場で嫌気されたわけです。
 

米インフレ率は落ち着き、来年以降、利上げ打ち止め感が出る可能性も

 一方、米国のインフレが加速する懸念は特にありません。金融当局が重視しているコア・インフレ率は、ターゲットの2%前後に留まっています。平均賃金の伸びが高まっていますが、現時点で米インフレ率が加速する兆しはありません。

米平均賃金上昇率と、インフレ率(消費者物価コア指数・前年比)の推移:2011年1月~2018年11月

出所:米労働省


  原油が急落したことから、世界的にインフレが抑えられる期待もあります。インフレ加速の兆しがないにもかかわらず、FRBが利上げを続けるスタンスを示しているのは、やや引き締めにかたより過ぎていると、私は考えています。

 

 

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