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インド準備銀行(中央銀行)の『パテル総裁』が10日、突然辞任を表明しました。このところ中銀は、信用不安の起きたノンバンクへの対応などを巡り、インド政府と激しく対立していました。政府が中銀に流動性を高める指示を出したことで、中銀は「独立性が損なわれる」と強く反発していました。 『パテル総裁』の辞任の背景には、政府との対立があるとみられます。『パテル総裁』の辞任を受けて、インド金融市場は下落しました。
【ポイント1】『パテル総裁』が一身上の都合で辞任
政府からの圧力への抗議か
インド中銀の『パテル総裁』は10日、「一身上の都合で総裁を直ちに辞任する」と発表しました。2016年9月に総裁に就任したパテル氏が、任期の3年を9カ月残して、突然辞任を表明したことは、政府から中銀への圧力に対する抗議とみられます。
【ポイント2】政府との対立が激化
総裁の後任は政府寄りの可能性
モディ政権は来年5月までに予定される総選挙をにらみ、中銀に対し、ノンバンクに対する流動性供給などを要求し、圧力をかけていました。これに対し、アチャルヤ副総裁は10月の講演で、「中銀の独立性が損なわれれば市場の混乱に至る危険性がある」と反論しました。このように、政府と中銀の対立は鮮明になっていました。
総裁が辞任などで不在になる場合、中銀内の中央委員会の推薦を受けて、政府が任命することになります。モディ政権が主導する形で次期総裁を決める形となり、政府寄りの人物になる可能性が高いとみられます。この場合、金融政策はハト派的になりやすいと考えられます。
【今後の展開】金融市場には短期的に警戒感が残る
突然の『パテル総裁』の辞任を嫌気し、インドルピーは対米ドルで1%強下落しました。11日の株式市場や債券市場も下落して始まりました(日本時間14時現在)。
中央銀行の独立性を巡る不透明感は、金融市場のリスクプレミアムを上昇させ、短期的に金融市場のマイナス要因となりやすいと考えられます。ただし、景気が堅調な一方、原油価格が下落しているためインフレ見通しが好転していることは、金融市場全般を支えるとみられます。