アップル

 アップルを取り巻く今後の成長懸念と成長期待は以下のとおりです。

成長懸念

a. iPhoneの販売台数鈍化
b. 米中貿易摩擦の影響
c. 中国など新興国のゲーム・アプリ規制強化

成長期待

d. サービス事業の拡大

株価見通し

 現在は、iPhoneの需要低迷を中心に成長懸念につながる材料が多く、これらを拭い去るまでアップル株は積極的には買われないでしょう。
 ただ、サービス事業の成長余地を考慮すると、長期目線では業績は拡大していくと考えられます。サービス事業の売上高構成比はまだ14%ですが(2018年9月期)、会社側は今後も同事業の拡大に注力し、開示する数値も充実させる方針です。開示された数値によって同事業の利益がしっかりと拡大していることが分かれば、安心感につながると考えています。

 

成長懸念

a. iPhoneの販売台数鈍化

 新型iPhoneである「iPhone XR」の販売不振を懸念する声が広がっています。iPhoneの部品を製造しているサプライヤーの業績下方修正や、「アップルが[iPhone XR]の生産計画を下方修正した」というサプライヤーのコメントが注目を集めました。アップルが、今後iPhoneの販売台数を公表しない方針を示したことも不安につながる中、直近では、「日本で[iPhone XR]が実質値下げされる」との報道も悪材料となっています。

 この「iPhone XR」問題で最も懸念されるのは、同社の高機能・高価格戦略がどこまで消費者に通用するのか不透明という点です。下の図のとおり、ここ数年、iPhoneの販売台数は2015年9月期をピークに緩やかな推移となっており、iPhone部門の増収には単価の上昇がポイントとなることが分かります。この点、前期2018年9月期は、販売価格が999ドル以上となる高級モデル「iPhone X」の投入が平均販売価格の上昇に寄与しました。

iPhoneの平均販売価格

iPhoneの販売台数

出所:ブルームバーグより楽天証券作成

 

 今期2019年9月期についても、会社側は単価の上昇を探ろうとしているように見えます。
今年の秋に会社側は3種の新iPhoneを投入しました。「iPhone XR」「iPhone Xs」「iPhone Xs Max」です。このうち単価が最も低いのが「iPhone XR」(販売価格749ドル~)ですが、高級モデル「iPhone X」が発売される前機種「iPhone 8」の当初の販売価格(699ドル~)と比べると50ドル高い水準となっています。「iPhone Xs」(販売価格999ドル~)は高級モデル「iPhone X」と同水準 、「iPhone Xs Max」(販売価格1,099ドル~)はそれよりも高い価格設定となっています。

iPhoneの現在の販売価格と画面サイズ(2018年11月21日現在)

旧機種 新機種
iPhone 8 599ドル~
(4.7インチ)
iPhone XR 749ドル~
(6.1インチ)
iPhone 8 Plus 699ドル~
(5.5インチ)
iPhone Xs 999ドル~
(5.8インチ)
iPhone X 999ドル~
(5.8インチ)※販売終了
iPhone Xs Max 1,099ドル~
(6.5インチ)
出所:各種資料より楽天証券作成

 

 この高級路線が今期も成功するかが業績を決めるポイントになっていましたが、足元の販売減速観測が浮上するなか、2つの懸念があります。「iPhone XR」と「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」が競合し売り上げを奪い合っているのではないか(旧機種の[iPhone 8][iPhone 8 Plus]は現在、当初の販売価格よりも値下げして販売されています)、高価すぎて新興国でシェアを拡大することが難しいのではないか、の2点です。

 

b. 米中貿易摩擦の影響

 米中貿易摩擦が深刻化すればアップルも影響を受けるでしょう。アップルは製品の多くを中国で組み立てており、米国による、中国の輸入品に対する追加関税と中国の報復措置(米国企業に対する素材や部品の販売制限)両方の影響を受ける可能性があります。

 

c. 中国など新興国の規制

 新興国の政府による規制もリスク要因です。中国では新しいゲーム販売の承認が停滞しており、ゲーム・アプリを展開するアップストアもその影響を受けています。

 

成長期待

d. サービス事業の拡大

 iPhoneのハード販売に対する懸念が広がっていますが、アップルが注力しているサービス事業は着実に拡大しています。同事業の2018年9月期の同事業の売上高は37,190百万ドル(前期比24%増)となりました。近年の推移を見ても堅調に売上高が拡大しており、2018年9月期の売上高構成比は14.0%となりました。

アップルの製品別増収率推移

出所:ブルームバーグより楽天証券作成

アップルの売上高構成比(2018年9月期)

出所:ブルームバーグより楽天証券作成
注:四捨五入の関係で合計が100にならないことがある

 

 会社側はサービス事業の2016年9月期の売上高を、2020年までに倍増する目標を立てています。サービス事業の中には、アップルケア、アップルミュージック、クラウドサービスなどのほか、以下のビジネスが含まれています。

・アップストアのアプリ課金収入、検索広告サービス

 アップストア内の有料アプリから一定率の手数料を得る仕組み。アップストアでアプリがキーワード検索された際、上部に広告宣伝するサービスも展開。アップストアはアプリの一大マーケットプレイスであり、アプリ市場が拡大すればアップストアも恩恵を受ける可能性が高い。

・アップルペイ

 2014年秋にリリースされたペイメントサービス。iPhoneにクレジットカードなどの情報を登録しておくと、iPhoneで店頭の支払いを済ませることができる。順調に拡大しており、2018年9月期の取引金額は前期比3倍となった。米国では、トップ100の小売店のうち71の企業がアップルペイに対応しており、全米の展開店舗の6割で使える状況になっている。

・アップルペイキャッシュ

 2017年冬にリリースされた個人間モバイル決済サービス。現時点で日本未上陸。メッセージ(メール)上に金額を打つと、メッセージの送信先に指定した金額を無料送金することができる(支払い元をクレジットカードにすると有料になる)。旅行費用などを立て替え払いしてくれた友人への送金や、飲み会代の請求などに使える。受け取った金額はアップルペイキャッシュに保管され、アップルペイとして利用できる。銀行を介さずにお金を取引することができるため、擬似的な銀行口座の役割を果たしている。非営利団体が発行する月刊誌「コンシューマー・レポート」でセキュリティー面が高く評価されており、安全面で競合との差別化が進んでいる。

アップルの業績推移(単位:百万ドル)

出所:会社資料より楽天証券作成
予想:ロイターコンセンサス(日本時間11月26日に楽天証券ウェブサイトより取得)

アップルのEPS推移(単位:ドル)

出所:ブルームバーグより楽天証券作成
注:EPSは希薄化後ベース
予想:ブルームバーグコンセンサス(日本時間11月25日時点)