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10月1日、ノーベル生理学・医学賞が発表され、京都大学の本庶佑特別教授と米国のアリソン教授が受賞しました。受賞は人の体を守る免疫の仕組みを利用してがんをたたく新たな治療法開発に道を開いたことが評価されました。これを受けて『がん免疫薬』に対して注目が高まっています。『がん免疫薬』はがんの種類にかかわらず幅広く有効である可能性を持っています。今後もさらに革新的な治療薬の登場が期待されます。
【ポイント1】『がん免疫薬』は第4の治療法
免疫療法を応用した大型新薬を発売
これまでがんの治療法としては手術、抗がん剤、放射線治療がありました。これに加えて、体に備わる免疫の仕組みを利用し、がんを攻撃する『がん免疫薬』は、第4の治療法として期待されています。
本庶氏が解明したのは、免疫細胞による攻撃からがん細胞が逃れる仕組みです。免疫細胞の表面に免疫のブレーキ役を担うPD-1という分子を発見しました。その後の研究で、それにふたをするとがん細胞を攻撃し始めることが分かりました。これを応用したのが、小野薬品工業の「オプジーボ」などの『がん免疫薬』です。
【ポイント2】「オプジーボ」は適用疾患の拡大により大型化
複数の企業が『がん免疫薬』を開発
小野薬品工業とブリストル・マイヤーズスクイブが共同開発した「オプジーボ」は、20年以上の時間と資金を費やし、京都大学と共同研究により2014年に発売に至りました。希少疾患を治療できることから、当初は極めて高い薬価が付きました。その後、薬価は引き下げられ、患者数の多い肺がんや胃がんへと適用が拡大し、大型新薬となりました。
PD-1の経路を遮断してがんを弱らせる仕組みを利用する『がん免疫薬』を扱うのは5陣営あり、これらの医薬品だけでも今後世界で数兆円になると言われています。このうちトップを走るのが小野薬品工業などの「オプジーボ」です。『がん免疫薬』はPD-1以外の分子をターゲットにした研究も進んでいます。
【今後の展開】「オプジーボ」に続く新薬が開発されるかが注目される
世界の製薬大手は、短期志向の高まりから、開発よりも買収を積極的に進めています。しかし今回の「オプジーボ」は自社開発の重要性を浮かび上がらせました。新薬開発の難易度は格段に高まっており、長期に及ぶ開発期間や発売後の薬価の問題など製薬企業にとって課題は多いものの、今後も「オプジーボ」に続く優れた自社開発新薬を開発できるかが注目されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。