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10月4日、『ドル円』相場は2017年11月初旬以来となる114円台となりました。今年3月下旬には104円台をつけていたため、半年強で10円近くの円安・ドル高が進んだことになります。しかしその後、急激な米金利上昇に伴う新興国通貨や米株式相場の下落から投資家のリスク回避姿勢が強まり、足元で「円高」となっています。『ドル円』相場は、米国1強がけん引する「ドル高」とリスク回避の「円高」の綱引きが当面続きそうです。
【ポイント1】10月初旬、『ドル円』は一時114円台に
パウエルFRB議長が米政策金利の中立金利超えを示唆
10月初旬、『ドル円』相場が円安・ドル高となった背景には、米国経済が極めて良好なことがあります。例えば、10月3日発表のISM非製造業景況感指数は61.6と1997年8月以来の高水準でした。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、米国経済が力強いため、米政策金利が3%程度とみられる中立金利を超える可能性を示唆しました。また、この発言の後に発表された9月の失業率は3.7%と約49年ぶりの低水準となりました。これらを受けて米長期金利は一時3.26%と、2011年5月以来の水準にまで上昇しました。
【ポイント2】中国の実質的な金融緩和から人民元下落
中国経済の減速懸念から、リスク回避の「円高」に
トランプ大統領の減税や財政支出などで米国経済は良好な一方、保護主義的な通商政策は、世界経済の先行きに不透明感をもたらしています。なかでも、中国に対しては厳しい姿勢で臨んでいます。米国の対中制裁関税に対して、中国も同様の報復姿勢を見せているものの、中国経済は製造業を中心に減速懸念が台頭しています。
中国政府は、インフラ投資の推進や、実質的な金融緩和により景気を下支えしようとしています。足元では、今年3回目となる預金準備率の引き下げが行われました。これにより人民元は対ドルで下落し、中国経済の減速懸念が改めて意識されたことからリスク回避姿勢が強まったことも「円高」要因となりました。
【今後の展開】米国1強の「ドル高」と、リスク回避の「円高」の綱引きが続く
こうした中国の対応による人民元下落について、ムニューシン米財務長官からはけん制する発言が聞かれました。また10日の米国株式市場は、急激な米金利上昇や高値警戒感から大幅に下落し、『ドル円』相場はリスク回避から「円高」となりました。トランプ大統領の政策により、世界経済は米国1強とも言える環境下にあることから、『ドル円』相場は基調としては「ドル高」と言えそうですが、当面は米中貿易摩擦が生む不透明感などからくるリスク回避姿勢が「円高」を呼び、『ドル円』相場は綱引きの状況が続きそうです。