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 電子回路に使われるコンデンサーなどの『電子部品』価格は、これまで値下がりすることが一般的でしたが、一部の部品で需要増加に伴う需給ひっ迫から価格が下げ止まったり、値上がりするなど異例の事態となっています。電動車や次世代通信規格「5G」向けなどスマートフォン以外への用途の拡大が背景にあり、『電子部品』メーカー各社による国内設備投資も本格化してきました。今後の動向が注目されます。

 

【ポイント1】電動車や5G向けなどに『電子部品』の需要が拡大

需要好調から積層セラミックコンデンサー(MLCC)など異例の価格上昇

 電動車や5G向けなどスマートフォン以外への用途の拡大を背景に、『電子部品』は過去最高水準の受注が続いています。とりわけノイズを除去するなど、電子回路には欠かせない部品であるMLCCはスマホ1台で最大1,000個、車1台で5,000個程度と大量に使用されるため、需給がひっ迫しています。

 村田製作所はMLCCの値上げを表明しました。通常では同部品は生産設備の減価償却が進み生産コストが低下すると値下がりしていくため、価格が上昇するのは異例です。蓄電容量の大きいアルミ電解コンデンサーでもニチコンなどが値上げを進めています。

 

【ポイント2】需要拡大を背景に国内投資が本格化

村田製作所は大規模投資を発表

 需要拡大を背景とした深刻な品不足に対応するため、MLCCなど『電子部品』の国内投資が本格化してきました。国内に投資するのは、電子機器の高機能化で部品の微細化が進み、高い生産技術が求められることや技術流出を防ぐためです。

 MLCCで世界シェア約4割を持つ、村田製作所は9月25日、同部品の需要増加に対応するため、島根県で400億円を投じ新工場を建設すると正式に発表しました。

 京セラは半導体製造装置、車載用カメラ向けなどの中期的需要拡大に対応するため、セラミック部品を鹿児島の2工場で生産能力拡大を計画しています。またTDKは山形で、太陽誘電は新潟で、MLCC設備の増設を進めています。

 

【今後の展開】継続的なシェア拡大と利益拡大に期待

 スマートフォンなどの完成品は米中韓勢が強いものの、『電子部品』は、日本企業が高い競争力を持っています。今回の需給がひっ迫する局面をとらえて、日本企業は設備増強を進め、海外企業を引き離す方針です。各社の戦略的な取り組みにより、継続的にシェアと利益が拡大していくことが期待されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。