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 日経平均株価は、4月以降22,000円台を中心に比較的狭いレンジ内での動きが続いていましたが、ここにきて上値の抵抗線となっていた23,000円を上回ってきました。今回の上昇の伏線となったとみられる高水準の『空売り比率』や、拡大が加速した「NT倍率」(日経平均株価÷TOPIX)などの需給・テクニカル指標に注目して、今回の上昇の要因と今後の株式市場について検討してみたいと思います。

 

【ポイント1】『空売り比率』は参加者の相場への強弱感を反映

「NT倍率」は日経平均先物主導で上昇する場合などに拡大

『空売り比率』とは、東京証券取引所が金額ベースの売り注文をもとに日次で公表しています。先に売って後で買い戻す取引ですから、この水準が高い場合は相場の下落を見込む市場参加者が多いことを意味します。

「NT倍率」は、日経平均株価をTOPIXで割った倍率で、日経平均先物主導で裁定買いなどを伴なって上昇する場合や、日経平均株価構成比の高い値嵩株が上昇する場合などで拡大する傾向があります。

 

【ポイント2】高水準の『空売り比率』が株価上昇の伏線

日経平均株価の上昇に伴い「NT倍率」も拡大

『空売り比率』は一般に40%を超えると高水準とされますが、7月30日以降、33営業日連続で40%を超えていました。空売りが増加した要因として、米中の貿易摩擦や新興国通貨下落に加えて、国内では台風と地震被害が発生、下値に備える材料が相次いだことがあります。

 こうした中、トルコ中銀の大幅利上げによる新興国リスクの後退や米国株式が上昇したことなどから、積み上がった空売りや日経平均先物に買戻しが入り急速に株価が上昇しました。

「NT倍率」は昨年末時点は12.52倍でした。4月以降、構成比率上位のファーストリテイリングなどの株価の上昇で拡大基調でしたが、日経平均先物の買戻しに伴う上昇で更に拡大し、9月12日には13.36倍となりました。

 

【今後の展開】買戻しによる上昇はほぼ一巡ながら大幅な調整の可能性も小さい

 高水準の『空売り比率』を解消するポジション調整の買戻しによる株式市場の上昇は、ほぼ一巡したと思われます。NT倍率についても、構成比率が高い銘柄のバリュエーションが高くなっており、目先的には拡大に一服感があります。ただ裁定取引、信用取引などの指標を見ても買いが積み上がったとはいえず、大幅な調整の可能性も小さいとみられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。