そしてリーマンショックは世界に波及していった

 10月は9月以上にすさまじい月となりました。

 ドルの買い戻しは9月以上に進み、ユーロは月間で約1,800ptの変動幅(1.4175→1.2329)、豪ドルは約2,000ptの変動幅(0.8020→0.6007)となりました。この結果ユーロ/円は月間で約37円の変動(150.58→113.62円)、豪ドル/円は約30円の変動(参考値:85.15→55.05円)となりました。

 ドル/円は、このクロス円に引っ張られ、また日本株の下落による為替ヘッジの戻し(円買い)によって90円台まで突っ込むところとなりました。10月の変動幅は15.67円となりましたが(106.54→90.87円)、クロス円の円高幅に比べると半分の変動幅です。

 これらクロス円の急落の背景は、金融機関、ヘッジファンドの破綻や清算によって、ここ数年間ドル調達で投資した資産の処理(デレバレッジ)が一気に進んだことです。つまり、ドル高がすさまじい勢いで進行しました。ドル高によってユーロが下がり、ユーロ/円が下がり、つられてドル/円が下がりました。ドル高と同時に円高も起こる「ドル高・円高」の相場となりました。

 

世界の株式時価総額の約60%が失われた

 株式市場ではさらに悲惨な状況となりました。

 NYダウは約3,000ドルの値幅で動き(しかも月初から8営業日で下落)、前月終値比では14.1%の下落、日経平均株価は約4,200円の値幅で動き、前月終値比では23.8%と過去最大の下落率(当時)となりました。

 他の先進国や新興国も同じであり、世界の株式時価総額は2007年10月比で約60%に当たる約30兆ドル(約3,000兆円)が消滅したと言われています。強烈な消失です。日本のバブルのときも約60%消滅し、その後、日本経済は逆資産効果によって大停滞時期が続きましたが、世界の株式市場の60%の消失による逆資産効果は想像したくないほどの影響でした。

 これらの一連の出来事によって世界経済は一気にブレーキがかかりました。それまで、IMF(国際通貨基金)経済見通しによる世界のGDP(国内総生産)成長率は2006年5.0%、2007年5.2%と好景気でしたが、リーマンショックによって2008年3.0%、2009年▲0.6%と、あっという間にマイナス成長となりました。日米欧は世界よりも悪化し、米国▲2.4%、ユーロ圏▲4.1%、日本▲5.2%と2009年は大幅なマイナス成長となりました。

 改めて9月から10月にかけて起こったことを整理すると、次のとおりです。

(1)住宅バブルの破裂によって金融機関やファンドが保有していた資産の損失、評価損拡大

(2)株式下落、信用市場収縮によって金融不安は欧州から米国と全世界に波及

(3)金融機関の破綻、増資、買収による再編やファンドの破綻により資産売却(株、債券、為替)が加速

(4)短期金利市場、信用市場の機能停止

(5)政府の公的支援と銀行国有化

 上記の出来事が、9月15日から10月初めに次々と起こり、その結果、マーケットでは次のようなことが起こりました。

(a)ドル流動性の枯渇と短期金利高止まりによるドル高

(b)世界景気減速懸念から株式市場と商品価格の下落(原油も大幅に下落)

(c)為替市場では、欧州通貨、オセアニア、新興国通貨が対ドルで売られ、対円でも売られた(ドル高・円高)

 ドル/円は、ドル高のバイアスとクロス円の円高バイアスにはさまれ、クロス円の円高バイアスがやや勝る動きとなりましたが、ドル/円単体では円高が抑制された動きになりました。

 これら一連の動きは7月から顕著に見られ、月を追って上下変動が大きくなりました。

 例えば、ユーロ/円は2008年7月の高値169.97円から10月には113.62円まで売られました(値幅約56円)。ドル/円は、8月の高値110.67円から12月には87.13円まで売られ、値幅は約23円とユーロ/円の半分以下でした。