筆者はこれまでレポート、ラジオ、セミナー等で、アマゾンは(独占禁止法的な分割のリスクはあるが)「最強銘柄」だと申し上げてきた。アマゾンの過去1年のトータルリターンは106%、2018年の年初来のリターンは70%である。

 アマゾンは商品販売の資金回収が非常に早く、商品の仕入れ先に資金を支払うまでの間の資金調達コストはゼロである。アマゾンはその間の資金運用収入が大きい。ウォーレン・バフェットの<保険業の調達コストゼロ>のビジネスモデルと共通する部分も多く、あのハイテク株嫌いのウォーレン・バフェットでさえ、「われわれの時代が生んだ最高の経営者」とアマゾンCEOのジェフ・ベゾスを絶賛している。

 アマゾンは人工知能やゲノム分野への先行投資も怠りない。現在、アマゾンのPERは202倍と異常に高いが、それでもモルガン・スタンレーは8月29日にアマゾンの目標株価を35%引き上げている。いずれにせよ、筆者は標準偏差ボラティリティトレードモデルに従ってトレンドについていくだけだ。

アマゾン(月足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート


 

アマゾン(週足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート


 

アマゾン(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ
中段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
下段:売買シグナル 買いトレンド=グリーン・売りトレンド=オレンジ
出所:パンローリングカスタムチャート


トランプのハイテク企業攻撃

 7月にフェイスブックやツイッターが1日で20%超の下げに見舞われた。そこからは、ハイテク株への警戒感も浮上し、もはやハイテク株なら盤石と言えなくなっている。

 8月28日にトランプは、「グーグルやフェイスブック、ツイッターが極めて厄介な領域に踏み込んでいる」と発言した。民主党寄りのリベラル企業が多いIT業界をトランプは以前から嫌っているのだが、8月30日には、「グーグルなどのハイテク企業が反トラスト法違反の状況にある」と発言している。
 

【トランプ米大統領はアルファベット傘下のグーグルなど、テクノロジー企業がリベラルな観点を優先させているとの批判を強め、「反トラスト法違反の状況」 にあるかもしれないと指摘した。ただ、これらの企業を分割すべきかについては公式コメントできないと繰り返した。大統領は30日に大統領執務室でブルームバーグ・ニュースとのインタビューに応じ、「非常に反トラスト法違反の状態にあると多くの人が考えている」が、対象がグーグルやアマゾンやフェイスブックであろうと、「私は分割についてコメントしない」と述べた】(8月31日 ブルームバーグ 『トランプ大統領、グーグルやFB、アマゾンに「独禁法違反」の可能性』)
 

 米司法省も「ソーシャルメディアが保守派の意見を抑え込んで反トラスト法(独占禁止法)に違反している恐れがある」とするトランプの批判に同調して動いている。昨日はフェイスブックとツイッターのCEOが議会で証言(グーグルは欠席)を行ったが、これを嫌気してハイテク株への下押し圧力が強まる格好となっている。

 Dr.Doom(陰鬱博士)と呼ばれる著名ファンド運用者マーク・ファーバーは「この相場は一発屋の芸能人のビック5(アップル・マイクロソフト・アマゾン・グーグル・フェイスブック)やFAANG(フェイスブック・アップル・アマゾン・ネットフリックス・グーグル)で盛り上がっているようにみえる。投資家は少数の銘柄が指数を高値に押し上げているのを懸念すべきである」と、以前から警鐘を鳴らしている。
 

【ハイテクはケインズ主義のエコノミストにとって完璧なのだ。あらゆる種類の実質的インフレを生まずに(IT企業の集積地を除く)全産業界で構築できるし、おカネを投じられる。真に重要なテクノロジーはニーズを満たし、コストを削減し、得てしてさらに好ましい専門分野で多くの人を雇用し、多額の利益を債務返済に向けられる。それは経済全体で生産性を向上させる。しかし、現在の仮想世界でウォール街と政府が求める恩恵をもたらしているのは、耳心地の良い作り話で生産的恩恵はとるに足らない、戦略性に欠けたテクノロジーの開発である。こうした戦略性に欠けたテクノロジーがコモディティ価格や賃金水準ではなく、資産価値を引き上げる。そして、少数ながら巨額の報酬を約束された影響力の大きな特権階級を養い、インフレに影響を与えない。ネットフリックス、フェイスブック、スナップといった企業は時間の無駄でしかない。多くの人が生産性や生活の質に悪影響を及ぼすと分かっている。こうした企業の収入が景気の下降局面でも維持されるだろうか。より重要なのは、こうした企業に下降局面でも資金を調達できるだけの魅力があるだろうか。ネットフリックスは流動性が止まった時点で債務不履行に陥るかもしれない。その番組の価値は将来の再放送収入で資本計上された生産価値に見合いそうにないからだ。テスラやセラノス(血液検査会社)のような企業は、今後もたらされる恩恵よりもコストがかかる低品質の製品を提供するのが関の山である。最悪の場合、詐欺だ。これらも将来的評価損の源泉となる。しかし、ケインズ主義者の結論では、得てしてハイテクは土砂をすくう必要のないところで穴を掘って埋める"高ハイテク度"な方法となる。ハイテクバブルは選ばれた人々には雇用と資産インフレをもたらす】(出所:マーク・ファーバー博士の月刊マーケットレポート  The Gloom, Boom & Doom Report)
 

 それについては、いろいろ議論があろう。しかし、米国株とはつまるところ、FAANGの動き次第なのだ。非常に脆弱な構造ではあるが、米国株が上がるか下がるかはFAANG次第なのである。そして、日本株が上がるか下がるかは、基本的に米国株次第だ。

 為替が円安になるか円高になるかという問題も、基本的に株式市場のリスクオン・リスクオフが鍵を握っているのだ。ハイテク株の動向からは目が離せない。