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トランプ大統領は、今年3月に中国の知的財産侵害を理由として通商法301条を発動し、現在までに中国からの輸入のうち500億ドル相当分に対して25%の追加制裁関税を課しました。一方、中国もすぐさま同額相当分に同率の報復関税を課しました。さらに今後、米国は2,000億ドル相当分の対中輸入へ追加関税を予定しています。高まる『米中貿易摩擦』の経済への影響はどの程度になると考えられるのでしょうか?
【ポイント1】米中とも政治的重要分野を中心に、500億ドル相当分へ追加関税
さらに米国は2,000億ドル相当分、中国は600億ドル相当分に追加関税を賦課
米国による500億ドル相当分への制裁関税は、中国の重要育成産業を中心とした、産業用ロボットや航空宇宙分野などが対象です。これに対して中国は報復措置として、米国産の大豆や牛肉など、トランプ大統領の支持率が高いとされる州の重要な農産品など500億ドル相当分に追加関税を課しています。
さらにトランプ大統領は2,000億ドル相当分の対中輸入に対しても25%の追加関税を課す旨の声明を発表しています。また米国がこの追加関税を実施する場合、中国は600億ドル相当分の対米輸入に対して最大25%の追加関税を課すと発表しており、米中は貿易戦争の様相を呈しています。
【ポイント2】追加関税の成長率への影響を試算すると…
未発動分の発動の際には、中国経済にはより大きな影響が
こうした追加関税の賦課により、どの程度の影響が考えられるのでしょうか?例えば、実質GDP成長率への影響を試算してみると、現在発動済みの500億ドル相当分への追加関税は、米国経済には▲0.11%程度、中国経済には▲0.13%程度の下押し要因(※、以下同)と見られます。
一方、未発動の2,000億ドル相当分及び600億ドル相当分は、米国が25%、中国が15%の追加関税をかけた場合、最大で米国経済には▲0.25%程度、中国経済には▲0.53%程度の影響が考えられます。
(※OECDの付加価値ベースの貿易データを用いて当社が試算)
【今後の展開】中国は景気下支えの方針を発表、今後も米中の貿易交渉に注目
中国経済は7月の主要指標が下振れするなど足元ではやや減速感が見られるなか、貿易摩擦の影響などが心配されます。こうしたなか、中国政府は経済成長の目標達成に向けて、7月下旬にインフラ投資など内需刺激により景気を下支えする方針や新たな減税策などを示しました。今後も米国は2,000億ドル相当分、中国は600億ドル相当分への追加関税の賦課が検討されているほか、トランプ大統領はさらに3,000億ドル相当分の対中輸入への制裁関税を準備しているとも発言しています。このため『米中貿易摩擦』の解決にはまだ時間を要しそうで、今後も米中の貿易交渉への姿勢とその影響が注目されます。