<今日のキーワード>
米国に12行ある地区連邦準備銀行のひとつカンザスシティ地区連銀は、毎年8月下旬にワイオミング州『ジャクソンホール』において、経済政策に関する国際シンポジウムを開催しています。世界各国から中央銀行総裁、政策担当者、学者などが参集し、世界経済や金融政策を巡る議論を交わします。今年の会議は「変化する市場構造と金融政策への影響」をテーマに、8月23日~25日に開催されました。
【ポイント1】パウエルFRB議長は利上げ継続の妥当性を主張
パウエルFRB議長の講演の主題は「変化する経済における金融政策」
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、8月24日にカンザスシティ連銀主催の国際シンポジウムで、「変化する経済における金融政策」という主題の講演を行いました。
そのなかで、今後の金融政策の方向性について「インフレ率は、FRBが目標とする+2%に接近してきたが、緩やかな金融緩和解除の効果により、+2%を超えて更に上昇が加速するような気配は見えない。今後も力強い景気の拡大が持続するようであれば、緩やかな利上げの継続が妥当である公算が大」と述べました。
【ポイント2】FRBが直面するリスクを踏まえると、漸進的な金融政策が妥当
中立金利は不確実性が高い
利上げを進めていく過程で、米連邦公開市場委員会(FOMC)が直面するリスクとして、(1)引き締めの速度を速めて、景気拡大の期間を不必要に短縮化するリスク、(2)引き締めの速度が緩慢すぎて、景気過熱を招き、経済を不安定化させてしまうリスクの2点を指摘しました。
さらに、金融政策を遂行するうえで重要な指標である潜在成長率や、中立金利に関しても不確実性が大きいと述べ、この点からも「漸進的な利上げ」が妥当と主張しています。
【今後の展開】リスクはインフレ期待の不安定化、その場合は如何なる対策も採ろう
パウエルFRB議長は、「インフレ期待が大幅に上昇ないし低下する、あるいは再び危機の脅威が生じるような場合には、FOMCはどのような対策も講じると確信している」と語りました。これらを踏まえると、議長講演の結論は、つまるところ「今後の金融政策のかじ取りは経済情勢次第」ということに落ち着くと考えられます。
今回の『ジャクソンホール』講演を受け、米国市場では「利上げのペースが加速することはない」との観測が強まったこと等から、株式市場ではS&P500種株価指数等が史上最高値を更新し、債券市場では債券利回りが低下しました。一方、為替市場では、ドルが日本円やユーロ等の主要通貨に対して売られました。