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深刻な人手不足などを背景に『賃金上昇率』に加速感が出てきました。厚生労働省が8月7日に発表した毎月勤労統計によると、6月の名目賃金は前年同月比+3.6%となりました。また2018年度の都道府県別の最低賃金の改定額も+26円の874円となり、ともに高水準の上昇となりました。一方、総務省が発表した6月の実質消費支出は5カ月連続で減少しました。賃金上昇が消費の増加につながっていくか注目されます。
【ポイント1】『賃金上昇率』に加速感
現金給与総額、最低賃金ともに上昇
毎月勤労統計によると、6月の名目賃金にあたる1人当たり現金給与総額は44万8,919円となり、前年同月比+3.6%、実質ベースでも同+2.8%と、ともに21年5カ月ぶりの高い伸びとなりました。
2018年度の都道府県別の最低賃金の改定額は、全国平均で前年比+26円の874円となり、過去最大の引き上げ幅となりました。都道府県別では時給800円以上が28都道府県となり、今回13県増えました。
【ポイント2】一般労働者・パートともに『賃金上昇率』は高水準
個人消費は低調
名目賃金の内訳をみると、現金給与総額の内、基本給にあたる所定内給与は前年同月比+1.3%、所定外給与が同+3.5%、賞与が同+7.0%となりました。この要因として、企業収益の改善で支給額が増えたことに加え、賞与支給が6月に前倒しされた影響の可能性もあるとみられます。パートタイム労働者の待遇改善も進んでおり、時給は同+1.8%で一般労働者の所定内給与の同+0.9%を上回りました。
一方で消費は低調です。総務省が8月7日に発表した6月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯あたり消費支出は26万7,641円でした。物価変動の影響を除いた実質で前年同月比▲1.2%と、5カ月連続で前年同月を下回りました。パック旅行費など教養娯楽関連が同▲8.2%、諸雑費も減少しました。一方、自動車等関係費といった交通・通信は同+3.4%、エアコンなど家具・家事用品は同+7.7%となりました。
【今後の展開】賃金上昇が消費増の好循環につながるか注目
人口構成や働き方改革による正社員の勤務時間減少などから、人手不足が更に強まるとみられるなか、企業は好調な業績を背景に人材への投資を拡大しています。一方で将来への不安や、ガソリン、食料品価格の上昇などの影響もあり、個人消費に力強さはありません。加速感の出始めた『賃金上昇率』が、今後消費の増加につながるか注目されます。