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『FFR』は、「自由で公正かつ相互的な貿易取引(Free、Fair and Reciprocal Trade Deals)のための協議」の頭文字からとった、日米間の新しい貿易協議の略称です。2018年4月の日米首脳会談で、設置に合意しました。両国間の貿易・投資のさらなる拡大を通じて、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域における経済発展を実現することを目指しています。
【ポイント1】2018年8月初旬に第1回会合を開催
通商政策を巡る両国間の隔たりを埋めるには至らず
『FFR』の第1回会合は、2018年8月9日、10日の両日に、米国のワシントンD.C.で開催されました。日本は、米国に対して環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への復帰を要請したのに対し、米国は二カ国間の自由貿易協定(FTA)を重視する立場を改めて強調。両者の隔たりを埋めることはできなかったようです。
【ポイント2】信頼関係に基づき協議を継続することで一致
米側は成果を焦らなかったもよう
第1回『FFR』の結果概要は、以下の通りです。(1)自由で開かれた経済発展を実現するため、日米両国は日米間の貿易をさらに拡大させることの重要性を認識する、(2)双方の共通認識に基づき協力分野を拡大する、(3)次回会合を18年9月を目処に開催する等です。残念ながら、あまり内容のあるものとは言えないでしょう。
敢えて言えば、米国側がFTAへの成果を焦ることにより、自動車関税の話を前面に押し出してくるという最悪の展開に至らなかったという点を、評価できなくもありません。会合後にトランプ大統領やライトハイザー米通商代表部(USTR)代表から牽制発言がなかった点も、安心材料と言えるでしょう。
【今後の展開】来る中間選挙に向けて、得点を稼げるかが米国側の焦点になろう
ただし、第2回会合では米国からの市場開放圧力が強まる可能性も否定はできず、完全に不透明感を払拭することは難しいと考えられます。しかしながら、米国にとって貿易交渉の本丸は中国です。しかも、中間選挙が近づいてきたにもかかわらず、北米自由貿易協定(NAFTA)等の交渉で、実務者が多忙を極めています。
こうした点を踏まえると、最終的な結論を先送りしつつ、対日交渉においては無難な落としどころを探るという展開になる可能性も大いにありそうです。9月の日米首脳会談(日程は未定)で、トランプ大統領が、11月の中間選挙に向け、ある程度のアピールができる状態にまで持っていけるかが焦点になるのではないでしょうか。