<今日のキーワード>
日本の製薬企業は欧米企業に比べて業績が低迷していると言われてきました。この背景には政府の医療費抑制策に伴う薬価の引き下げと後発薬の使用率引き上げや、主力薬が特許切れを迎えるなかでの新薬不足などがあります。ところがここにきて、自社の得意分野に特化した研究の成果などから、日本企業の『大型新薬』が発売されたり承認を目指す動きが続いており、今後の動向が注目されます。
【ポイント1】業績伸び悩みの背景に医療費抑制策や新薬不足
『大型新薬』発売や承認申請の動き
日本企業の業績低迷の背景には、後発薬の使用率引き上げなど政府の医療費抑制策と新薬不足がありました。新薬が、化学合成による医薬品から欧米企業が得意なバイオ医薬品にシフトしたことも影響しました。
新薬不足などに対応するため、欧米企業は企業買収などを進めたのに対して、日本企業は自社の得意分野に特化した研究を進めた結果、ここにきて『大型新薬』発売や承認申請への動きが顕在化しています。
【ポイント2】「オプジーボ」は使用領域拡大により大型化
アルツハイマー病治療薬などでも期待の『大型新薬』
小野薬品工業と米製薬大手が共同開発した「オプジーボ」はがん細胞が持つ免疫細胞の活動を抑制する能力を解除し、免疫機能を覚醒させる新しいタイプのがん治療薬です。希少疾患を治療できることから極めて高い薬価が付きました。その後、薬価は引き下げられましたが、患者数の多い肺がんや胃がんへ使用が拡大し、『大型新薬』となりました。
1兆円市場ともいわれるアルツハイマー病治療薬で他社の治験失敗が相次ぐなか、エーザイは7月6日に同薬の治験で有効性を確認したと発表し注目を集めました。同薬は米バイオ医薬大手と共同開発で通常3段階ある治験の第2相治験を完了しました。かつて同社の収益を牽引した「アリセプト」の後継として期待されます。
塩野義製薬が3月に発売した従来の製品とは違う仕組みのインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」や、治験結果を受けて第一三共のがん治療薬「ADC(抗体薬物複合体)」なども注目されています。
【今後の展開】独自性の高い『大型新薬』が注目される
期待の高い新薬候補を持つ企業に対する株式市場の評価は高く、エーザイ、第一三共の株価は昨年末対比約50%程度上昇しました。ただ欧米の大手製薬企業との販売規模や研究開発投資額には大きな開きがあり、国内企業が独自性の高い『大型新薬』を引き続き投入していけるか注目されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。