金融政策決定会合後のドル/円は様子見
これほど注目された日銀の金融政策決定会合は久しぶりでした。
先週の指値オペからマーケットの注目度合いは高まりましたが、ドル/円市場は様子見ムードが漂い、30日には昨年12月以来の日中値幅30銭以内という狭いレンジとなりました。
注目の金融政策は、フォワードガイダンス(金融政策の指針)を導入し、強力な金融緩和を継続するための枠組みを強化。「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」ことを決定しました。
この発表を受けて、円売り優勢となり、先週の高値111.54円を超えました。注目されていた長期金利操作やETF(上場投資信託)の政策微調整については「金融緩和を継続するための枠組み強化」という意味合いで、予想以上の微調整がありました。その内容は、次のとおりです。
(1)長期金利のある程度の変動を許容
→金利上昇を容認し、0%程度を基準に±0.1%→±0.2%の変動を容認
(2)国債買い入れ額を弾力化
→年80兆円ペースの購入額を上下に変動
(3)ETF買い入れ額の弾力化
→年6兆円ペースの購入額を上下に変動し、日経平均株価連動型ETFを減らし、TOPIX(東証株価指数)連動型ETF買い入れを増やす
(4)日銀当座預金のうち、マイナス金利(▲0.1%)が適用される対象額を減額
→現状の約10兆円から5兆円程度に減額
このように大方の予想以上の項目で政策の微調整が決定されました。この微調整だけを捉え、円高に反応して111円台から110.75円まで円高が進みました。
しかし、将来の金融政策を約束する手法として「フォワードガイダンス」を導入し、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」と明確に約束したことをマーケットは好感したようです。政策微調整よりも金融緩和強化の決定が優り、乱高下の後ドル/円は円安が進行しました。
遠のく出口。長期化する金融緩和政策
日銀は決定会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、物価上昇率の見通しを4月時点から下方修正しました。
日銀の物価見通し(政策委員9人の中央値)
展望レポートは、今回の決定の背景となる経済・物価の見通しです。
物価を下方修正したからこそ、今後も金融緩和を維持、強化するとの判断に至ったということになり、整合性が合っています。
一方で、物価見通しの引き下げに伴い、金融緩和の長期化が避けられなくなり、緩和の副作用を軽減するために、「継続するための枠組み強化」という形で政策を微調整し弾力化を決定したといえます。
しかし、円安が進行したといっても東京市場では、先週の高値111.54円を超えた程度の円安でした。ところが、海外市場に回ると、弾力化された微調整は無視されて「出口政策への変更なし」と期待外れの決定と捉えられ、さらに40銭ほどの円安となりました。しかし、112円には届きませんでした(高値111.96円)。迫力に欠ける動きです。
先週から、指値オペを数回実施し、柔軟な対応をしていることから、政策決定は現状追認として織り込まれているのか、あるいは、8月1日に発表されるFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文の結果を待っているため、相場は大きく動けないのかもしれません。
今回のFOMCでは政策変更は期待されていませんが、声明文では、先週発表された米国4~6月期GDP(国内総生産)の力強い数字(+4.1%)を受けて、後2回の利上げを後押しするようなタカ派寄りの内容になるとの見方が増えています。
一方で、+4.1%の数字の主因である自動車など耐久消費財の大幅な伸びは、関税による値上がり前の駆け込み需要も一部あり持続性がないとの見方や、また、輸出の押し上げ要因は、貿易戦争の影響で大豆価格が下落し、5月大豆輸出額が前月比9割増加したことが影響しているとの見方があります。
つまり、+4.1%は一時的な数字の可能性があるとの見方です。FOMCでは、このことをどのように景況判断するのかが注目です。FOMC声明文で景況判断を上方修正し、後2回の利上げについてタカ派寄りの内容になるのか、もしくは景況感は慎重に判断され、変更のない内容になるのか注目です。慎重な景況判断となれば、ネガティブサプライズとなり、ドル売り要因となりそうです。
景況判断が上方修正されタカ派寄りとなればどうなるでしょうか。
7月には円高要因であった要因が月末にかけて緩和傾向となってきたため((1)米中貿易摩擦の緩和、(2)中国の景気対策、(3)日欧通商交渉の好転)、そこへFOMC声明文で景況判断が上方修正されれば、再び113円台に乗せる可能性が出てきます。
1日のFOMCでは政策変更がなくても、声明文の内容に注意を払う必要があります。