さらに消費を取捨選択する時代へ
ベースアップによって現金給与が上昇しない限り、私たちが肌感覚から「所得が上昇した」と思うことは困難でしょう。とすれば、日本の家計は今後も節約意識を高く持ち、価値があると判断するもの以外への出費をしっかりと抑制していくでしょう。長期的に考えても、高齢化の進展に伴い収入の減少や医療費の負担に直面する世帯が増える可能性が高く、消費環境は楽観視できない状況です。
市場環境に反して、軒並み最高益を更新中の消費系企業
こうしたシリアスな消費環境ですが、日本の小売関連の大手企業は、軒並み最高益を更新しています。小売業の時価総額上位10社までを見ると、連結純利益が今期、最高益を更新すると予想されている企業が8社と好調です。
小売業の時価総額上位10社の最高益更新状況:連結純利益(前期実績および今期市場予想)
最高益更新企業の中には、海外事業で規模を拡大させているところもありますが、国内事業で健闘している傾向があります。
そこには、日本の消費の構造変化をとらえて、しっかりと成長する姿があります。
例えば、先に述べた外食や調理食品のように、日本の消費者の欲求に応える商品やサービスを提供している企業が成長していると言えます。
日本の消費者の需要に応えている企業は、まず前提条件として、質の高い商品や安定したサービスを提供しています。それに加え、値ごろ感、利便性、独自性を訴求することによって消費者をひきつけています。
値ごろ感、利便性、独自性の何を重視しているかは、企業によって異なります。
例えば、ファーストリテイリング(9983)であれば、値ごろ感のある衣類を、新素材などの独自性も打ち出しながら消費者に提供しています。良品計画(7453)は、値ごろ感に加えて独自の世界観を消費者に提供しています。
セブン&アイHD(3382)やスタートトゥデイ(3092)は必ずしも値ごろ感で勝負しているわけではありませんが、その分、自宅から徒歩圏にあることや、ネット上で商品を自由に選べるという利便性を提供して、消費者をひきつけています。
今後はこうした企業を詳しく紹介していきたいと思いますが、次回は、日本のスーパーストア業界についてまとめます。スーパーストア業界は、低価格競争で苦しんでいるように見えますが、業績が堅調に推移している企業もあります。